横田夫妻が3月10~14日にモンゴル・ウランバートルで念願だった孫娘・ウンギョン(幼名ヘギョン)さん(26)との対面を果たした。
〈モンゴル大統領、約束守った〉
3月19日の朝日新聞は、そんな見出しでモンゴルのエルベグドルジ大統領と安倍晋三首相の「固い絆」を報じた。記事によれば、同大統領が昨年9月に安倍首相の私邸を訪ねた際に、モンゴルでの面会を約束。同大統領は、翌月の訪朝で北朝鮮に首相の意向を伝えたという。
ただし、「これにはモンゴル政府の戦略も絡んでいた」と語るのはジャーナリストの成田俊一氏だ。そのモンゴル側のキーマンが、かつて旭鷲山として角界で活躍し、現在は大統領補佐官のダワーギーン・バトバヤル氏だった。
「彼が私に語ったところでは、昨年3月、安倍首相がモンゴルを訪問した際に、『拉致問題についてご協力をお願いします』と大統領に依頼していました。旭鷲山はその会談に同席したそうです。
そして今年1月に旭鷲山はモンゴルの政府高官を連れて訪日し、外務省の幹部たちと会っています。その時点で、モンゴルを面会の舞台とすることはほぼ決定していた模様です」
では、なぜモンゴルが仲介役となったのか。日朝両国とそれぞれ良好な関係にあるとはいえ、外交上のメリットがなければここまで積極的に関与するとは考えづらい。
「朝日新聞は美談のように報じていましたが、モンゴル政府関係者によれば、昨年9月に安倍首相の私邸に大統領が訪ねた本当の狙いは経済支援の念押しにあったそうです。今年4月に新ウランバートル国際空港の建設が始まる。これには総額500億円の日本のODA(政府開発援助)がすでに決まっていますが、さらに500億円の出資をモンゴル側は求めた。
大統領とすれば、『拉致問題に協力してほしい』という安倍首相の意向を受け入れる代わりに、バーターとしての追加支援を安倍首相に求めたのでしょう」
各国の国益が交差する外交ゲームにあって、経済支援の絡んだ取引は珍しいことではない。ただし、せっかく得たチャンスを結果に繋げられなければ意味はない。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号