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村上春樹、東野圭吾など日本の現代文学が韓国読書界を席巻

 日本に憧れ、歴史問題などで韓国の主張より日本を信じるような「イルポン(日本中毒)」現象に火がつき始めている。それは歴史のみならず、日本の大衆文化にまで及んでいる。

『嘘つき韓国の正体』(小学館ポスト・サピオムック)の著者のひとりでもある産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が報告する。

 * * *
 昨年、韓国で最大のベストセラーになり、今も書店で山積みされている村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が、ストレス社会を背景に現代韓国人の心をしっかりとらえている。

 この作品は「色彩のない喪失者」である主人公の自殺衝動からはじまり、青春の傷跡からの脱出と再生という“癒し文学”だ。若者をはじめ自殺が急増し大きな社会問題になっている韓国で、今、最も好まれている流行語は「ヒーリング(癒し)」である。

 ソウルの大型書店にはハルキ・コーナーが常設され翻訳本は約70種に上る。韓国は世界で最もハルキ文学ファンが多い国なのだ。

 ハルキ作品の翻訳を多く手がけてきた金春美・高麗大名誉教授は「家族に縛られず、一人暮らしの自由な生活をする主人公のライフスタイルや考え方は韓国の30代以下の若者たちの憧れになっている」という。

 ハルキだけではない。江國香織、宮部みゆき、東野圭吾、吉田修一、奥田英朗など、近年の韓国読書界を席捲しているのは日本の現代文学だ。

 特に、ミステリー不毛地だった韓国では日本の推理小説ブームが起きている。ソウル大をはじめ各大学の図書館の文学分野の貸し出し上位はほとんど日本作家が占めている。

 映画では「おしん」や「そして父になる」「悪の教典」などが相次いで公開された。

 テレビドラマでは日本の「女王の教室」や「家政婦のミタ」「ハケンの品格」などが韓国人俳優によって次々とリメイクされ、お茶の間に浸透している。

 日本の大衆文化の浸透は、現代韓国人の情緒やライフスタイルがいかに日本人に近いかを物語る。相変わらず過去の歴史にこだわるマスコミや政治・外交の突出した反日とは実に対照的である。

※SAPIO2014年4月号

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