ウクライナからロシアへの編入手続きが進みつつあるクリミア自治共和国。ロシアの介入によって欧米との緊張が「新冷戦」と呼ばれるまでに高まる中、意外な形で脚光を浴びた人物がいる。
3月6日にクリミアの新しい検事総長となったナタリア・ポクロンスカヤ氏(33)だ。今、彼女は世界中から「美人すぎる検事総長」として注目されている。
確かに、大きな瞳と彫りの深い顔立ちは、ヨーロッパのファッションモデルといわれても通用するほど。黒の制服が彼女の凛々しさを一層際立たせている。
検事総長といえば、一国の検察機関を統べる最重要ポスト。日本でも司法エリートが集う検察庁のトップであり、30代で就任することなど到底考えられない。
33歳にしてこの地位に就くのだから、クリミア中にその名を轟かせる才女に違いない。と思って取材を進めたが、彼女の素顔は厚いヴェールに包まれている。在ウクライナ日本大使館も首を傾げる。
「彼女の経歴については、こちらでも主席検事から検事総長に抜擢されたという以上の話は把握できていない。現在、調査中という状況です」
さらに、通信社のモスクワ特派員に聞いても、その正体はつかめてこない。
「ロシアの国営メディアは、彼女には検察での12年のキャリアがあるということを報じ、強面の検察官というニュアンスを強調していましたが、それ以外に彼女についての情報はロシア国内でも全く報じられていないんです」
なぜこの有事において、33歳の美女が抜擢されるに至ったのか。国際政治経済学者で参議院議員の浜田和幸氏はこう指摘する。
「ロシアのプーチン大統領の意向を反映していることは間違いない。彼女はロシアに批判的な国際世論が高まる中“ウクライナで起こった政権の転覆劇こそが違法だ”とクリミアの住民投票の結果を支持するべきとアピールしている。彼女の容姿がこのように注目されれば、その発言も少なからず影響力を持つ。巧妙な対西側への世論工作といえる」
それにしても“美人すぎる首相”として知られたティモシェンコ氏をはじめ、ウクライナには美人が多い。旅行雑誌では「美女の多い国ランキング1位」として紹介されることも度々だ。東西の文明が行き交う交通の要衝だけに、様々な民族が混ざり合ったことも、その理由のひとつといわれる。しかし、交通の要衝だからこそ、繰り返し紛争の舞台となってしまっていることも悲しい事実だ。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号