今冬、猛威を振るったインフルエンザ。厚生労働省・健康局結核感染症課によると、3月16日までの累積患者数は約1277万人で、5月下旬までカウントした昨シーズンの約1370万人を超えることは、ほぼ間違いない。
インフルエンザは例年、2月中旬までに流行のピークを迎え、その後は患者数が激減していく傾向にあるが、今年はどうやら3月に入っても流行がだらだらと続いているようだ。
著名人でもお笑いコンビ「バナナマン」の日村勇紀や「博多華丸・大吉」の華丸、スポーツ界では巨人の2軍選手が相次いでインフルエンザに感染するなど、一向に治まる気配がない。
東京都感染症情報センターのデータによれば、3月10日~16日に約400の医療機関から報告された東京都のインフルエンザ患者数は8563人。前週の9419人と比べると少なくなっているものの、「例年より患者数の減り方が緩やか」(同センターの担当者)なのが特徴だ。
実際に都内のある呼吸器内科クリニックを訪ねてみると、多数の花粉症患者のほかに、高熱にうなされるインフルエンザ患者も押しかけ、1時間~2時間待ちの大混雑。ウイルスの蔓延を避けるためにインフルエンザが疑われる患者だけ別室の待合席に隔離される光景も見られた。
「今年はB型患者に代表されるように、熱が出ない症状の人も多く厄介。自覚症状がないまま他人にうつしているケースがあるので、なかなか患者が減らない。シーズン中に型の違うインフルエンザに複数回かかる人の割合も多い」(処方箋薬局の薬剤師)
確かに今季はA香港型、B型に加え、2009年に大流行した新型インフルエンザ(H1N1)も検出されるなど“混在型”のシーズンとなった。それぞれの型で流行する時期も微妙に異なるため、なかなか終息に至らないというわけだ。
インフルエンザの流行を長引かせている要因はほかにもある。医学博士で医療ジャーナリストの森田豊氏がいう。
「季節的にインフルエンザウイルスは低温、低湿度を好むことはよく知られています。特に今年の冬は全国的に寒い日が長く続いたので、感染期間を延ばしたことは確かです。
また、ここ数週間の気候でいえば、寒暖差が激しかったため自立神経がアンバランスになり体の抵抗力を衰えさせた人も多く、いまだに蔓延するインフルエンザウイルスをもらいやすかったということは言えるでしょうね」
森田氏によれば、5月のゴールデンウイーク明けまでは決して油断できないという。せっかくの大型連休を台無しにしないためにも、インフルエンザ予防の鉄則<手洗い、うがい、マスク着用>は周囲に患者がいなくても順守したいところだ。