日本人の健康に対する関心の高さは、発刊されている健康雑誌の数にも表われている。現在、定期刊行されているのは14誌にものぼる。老舗の『壮快』と『健康』の創刊から現在までの誌面を辿ると、時代の流れを読み取ることができる。
たとえば、両誌とも1980年代半ば頃までは、西洋医学にはない健康の秘訣を・中国五千年の歴史・に求める傾向が強かった。『壮快』は頻繁に漢方薬の特集を組み、『健康』も漢方に加え中国の伝統的な体操、食物療法、家庭療法などの特集を組んだ。当時はまだ中国に神秘が残り、その食に対する信頼も揺らいでいなかったがゆえに成り立った企画だろう。
1980年代後半からは、口コミで広がっていた民間療法(健康法、健康食品)が主流になる。誌面に取り上げられることで一気に需要が拡大し、社会現象と呼べるほどのブームが起こったこともあった。
多くの健康雑誌では、そうした健康法を単に紹介するのではなく、「この健康法、健康食品によってこんな効能があった」といった体験談がぎっしりと詰まっている。現在、『健康』の発行元になっている主婦の友インフォス情報社社長で、同誌5代目編集長だった久次米義敬(くじめ・よしのり)氏が話す。
「うちの雑誌の編集方針は“ある・いる・できる”です。特別なものを用意する必要がなく、家に“ある”ものでできる。その健康法によって実際に効果の現われた人が“いる”。そして、他人の力を借りず、ひとりで“できる”──その条件に合う健康法を取り上げるのです」
それゆえ、必然的に体験談が重視されるのである。『壮快』もほぼ同様の編集方針だ。『壮快』現編集長の小川潤二氏はさらにこう付け加える。
「害や危険がないことも大事なので、誌面化する前に編集部員も試してみます。以前、冷水によって勃起力を強化する記事を載せたときには、私も冬の早朝に試しました(笑い)」
作り手がそこまで体を張る雑誌も珍しいかもしれない。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号