中国の胡錦濤・前国家主席が引退して、すでに約1年。前任の江沢民・元主席が引退後もいろいろな場に出ているのと比べ、公の場にはほぼ姿を現していない。胡氏は現在、浙江省の自宅で鋭気を養っており、健康には全然問題はなく、いまだに政治情勢に強い関心を抱き、“復活”の時期をうかがっているという。米国を拠点とする中国情報専門の華字ウェブサイト「多維新聞網」が報じた。
胡氏が中国共産主義青年団(共青団)トップの第一書記だったころの秘書で、現在、中国国務院台湾弁公室の葉克冬・副主任は最近、胡氏の隠遁先の浙江省で胡氏と会い、台湾情勢を中心に意見を拝聴したという。
葉氏が3月13日に閉幕した全国人民代表大会(全人代)で記者団の質問に答えたもので、胡氏は昨年3月の全面引退後、その動静が伝えられたのは初めて。
それによると、胡氏は引退後も自らが道筋を付けた中台の首脳会談の実現に強い関心をもっており、習近平主席と馬英九・台湾総統の会談方法について持論を展開。中台のトップ会談というよりも、中国共産党と中国国民党のトップとして、国共首脳会談の形にすべきだと語ったという。
さらに、会談場所については、香港などの中国大陸や台湾のほかの第3の場所が好ましいかどうかについても、「それは今後の両者の話し合いで決めるべきだ」と指摘。一部で出ているアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場を借りて、首脳会談を行なうことに否定的な見解を示した。
胡氏の健康状態について、葉氏は「まったく問題はない。健康そのものだ」と述べたうえで、ときどき夫婦で旅行をしているほか、孫に会うことを楽しみにするなど、他の引退幹部の生活とほとんど変わらないという。
ただ、新聞などは丹念に読んでおり、中台関係や国内の政治・経済問題などにも強い関心を抱いていることを明らかにした。
しかし、葉氏は「胡氏は引退後、現在の指導部に影響を与えるようなやり方を避けており、悠々自適の生活を送っている」としながらも、現指導部から何からのアプローチがあれば、「アドバイスすることはやぶさかではない」とするなど、何らかの形での“復権”に意欲を示していることを示唆した。
胡氏は2012年11月の第18回党大会で党中央軍事委主席に留任するとの観測も流れていたが、同主席を辞任したことで完全引退が確定。しかし、前任の江沢民氏は引退後も、長老指導者として胡氏に次ぐ序列2位を維持してきたことから、胡氏も政治的発言力を維持するとの見方があったものの、いまのところそのような兆候はない。