いよいよ国民の家計を圧迫させる消費税増税が実施された。増税前には連日、日用品などの買い溜めに走る人たちの姿が多く見られたが、駆け込みのメリットは所詮一時しのぎ。来年の10月からは、再び8%→10%への引き上げが襲ってくる可能性がある。
このまま消費税率は半永久的に上がり続けてしまうのか。「引き下げという選択肢だってありますよ」と話すのは、経済評論家で大阪経済大学経営学部客員教授の岩本沙弓さんだ。消費税制のいびつな問題点について、岩本さんがズバリと指摘する。
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消費税の持つ本質的な機能を考えるとき、付加価値税と称される消費税を採用していない米国の見解が参考となります。米国では1969年12月1日の企業課税特別委員会による大統領への第一回目の報告書の中で消費税の導入の必要はなしとして以来、採用を見送り続けています。
米国が消費税導入に反対する最大の理由は、この制度が純粋な税制度ではなく、自国の輸出企業支援の色合いが非常に濃いためです。
例えば当時の報告書の冒頭の部分で消費税について「The tax is, of course, rebated on exports and imposed on imports.(この税金は、もちろん、輸出製品に還付し、輸入品に課税するものである)」としているのが象徴するように、輸出企業へのリベート(還付金)ありきの税制という認識がなされています。
自由貿易や自由競争を信条とする民主主義国家の米国の立場からすると、特定企業への優遇策となる消費税を導入するわけにはいかない、という結論なのです。
消費税には「仕向地原則」があり、課税するのは消費をした土地でなくてはならないという大原則があります。日本で消費されたら日本の消費税、フランスで消費されたらフランスの消費税が課されるため、日本製品がフランスで売れれば、日本の輸出企業が納める消費税はゼロになるのです。
ちなみに、日本の消費税5%で徴税額は13兆円、うち輸出企業に渡されているリベートの金額は約3兆円となっています。今後10%まで引き上げられた場合、確実に6兆円近くまで増えることになるでしょう。
付加価値税・消費税を採用する各国が自国の輸出企業へリベートを渡すことによって、米国が被る損失額について米中小企業庁の関連団体の報告書などでは32兆円(2006年試算)という発表がされています。米国にとって他国が採用する付加価値税は非関税障壁であるとして米通商代表部は毎年報告書の中で国ごとに実情を列挙しています。