先日、女優の浅香光代が、不倫関係にあった、とある大物政治家との間に2人の男児をもうけていたことを告白し話題となったが、男性が子どもを認知した場合、男性はどのような責任を負うことになるのだろう? 弁護士の竹下正己氏はこう回答している。
【質問】
不倫中の彼女が突然、子供ができたと報告してきました。もちろん産まないでほしいと話し合いを持ったのですが、まったく聞く耳を持ちません。「子供は自分で育てる、迷惑をかけない、ただ認知してほしい」の一点張りです。認知した場合に、どのようなメリット、デメリットがあるか教えてください。
【回答】
認知により法律上の父親になり、親としての責任を負うことになります。正式な夫婦の間の子の場合、子は嫡出子になり、生まれながらに法律上の親子関係がありますが、結婚していない男女の間の子の場合、分娩により親子関係が明確な母親と違い、父親は認知届を提出することで、法律上の親子関係が成立するのです。
法律上の親子関係になっても、親権は彼女が持ちますから、親権者の子供を監護・教育する権利と義務は、あなたにはありません。しかし、扶養義務があります。民法第877条で「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。認知の結果、子の直系血族になりますから、彼女が自分一人で育てるといっても、できなくなったら、あなたが扶養義務を果たさざるを得ません。
任意に応じなければ、家庭裁判所が毎月一定額の給付を命じることになります。彼女の一切迷惑をかけないという約束は、せいぜい自分でやれる限りは一人で頑張るという程度のものと理解され、子供の扶養が必要になった状況下では、通用しません。
扶養の権利は、扶養を受ける必要のある要扶養者が扶養の余力ある扶養義務者に対して有する権利ですから、その親権者など要扶養者以外の者はもちろん、要扶養者自身であっても、あらかじめ放棄することは許されないと解されています。つまり、親としての扶養義務は免れないということです。加えて、認知するとあなたの戸籍にそのことが記載されますから、家族もいずれ知ります。その代わり子供が一人増えます。デメリットかメリットかはあなたが判断してください。
なお認知を拒否しても、本当に親子関係があれば、裁判所により強制認知されることも考えられます。重い判断は、すでに妊娠時に下されていたことになります。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号