犬は昔から私たちの生活に癒やしや和みを与えてくれる存在だが、核家族化が進む現代では、大切な「家族の一員」に注がれる愛情は格段に深くなり、それに伴い、獣医療の世界も劇的に進化している。3月19日に発売された『犬の名医さん100人データブック』(小学館)編集部の完全協力のもと、犬の名医と最新治療を紹介しよう。
人間と同じで、犬の世界でも高齢化が進んでいる。それに伴い、死因の第1位へと急増したのが、がんだ。麻布大学附属動物病院の信田卓男准教授が語る。
「数年前まで11歳前後だった日本の犬の寿命が、今は13歳を超えています。犬の2年は人間でいうと10年くらい。長生きすれば、当然がんを発症する可能性は高くなりますし、人間よりもがんの進行も早いのです」
信田准教授は、20年以上前から、がんの診断治療の重要性を見抜き、日本で初めて獣医療における腫瘍科を立ち上げた、「犬のがん治療」のパイオニアである。
「麻布大学では約7000例の様々な症状を診てきました。例えば、直腸の温存が難しい直腸がんでは、日本で初めて行なった『直腸粘膜引き抜き術』で、全摘をやらなくてすむケースも増えています」(信田氏。以下「」内同)
治療方針は、信頼性があり、オーソドックスな治療を安全確実に行なうこと。そのために最新の機材も用意している。
「放射線治療では、人間も使うリニアックという機械を使います。様々ながんの形に合わせて立体的にピンポイントで放射線を照射することができ、患畜への負担も少なくてすみます」
また、いち早く検診センターも立ち上げ、早期発見、早期治療にも努めてきた。
「がんの疾患は6歳くらいから増えてきます。8歳を超えたら年1回、10歳を超えたら年2回は検診をしてほしい。飼い主さんがワンちゃんのお腹を撫でたりしたときに、犬のがんで多い乳腺腫瘍を見つけることなどはよくあります。日頃からワンちゃんのことをよく観察してほしいですね」
100%治るとは言い切れないのが、がんという病気。現在は緩和ケアにも力を入れているという名医を頼る飼い主は多い。
※週刊ポスト2014年4月18日号