芸人、ミュージシャンとして活動するかたわら、映画『苦役列車』ではブルーリボン新人賞を受賞するなど、俳優としても活躍中のマキタスポーツ(44才)。
この春は、『花子とアン』、『ルーズヴェルト・ゲーム』、『リバースエッジ 大川端探偵社』と、なんと3つものドラマに出演。そのひとつ、『ルーズヴェルト・ゲーム』撮影前の初打ち合わせでは、近年のヒットドラマの演出方法を学んだと振り返る。
「今回、『半沢直樹』と同じ演出家のかたなんですが、“テンポよくセリフを言ってほしい”というリクエストがありました。最初にそうしたことを言われたのは、初めてです。『半沢直樹』もテンポ感がありましたよね。まるで音楽のリズムを奏でるような心地よさがある。おそらく、セリフをゆったりと話すと、今の視聴者はだるく感じてしまうんでしょう」(マキタ、以下「」内同)
演出だけでなくストーリー展開にも、最近は人気傾向があると指摘。
「現代は、勝ち組と負け組がはっきり分かれて、ごく一部の勝ち組だけがおいしい思いをしている社会です。だから、多くの人は、社会に対する諦め感がある。“世の中なんて変わらないけど、せめてエンターテインメントだけは、カタルシス(浄化。抑圧されていた感情が解放されること)を得たい”という欲求がすごくあると思います」
そして、視聴者はそのドラマの構図がわかりやすいほど、共感して物語にのめり込めるため、強いカタルシスを得られる。だからこそ、勧善懲悪の『半沢直樹』や、嫁姑バトルを描いた『ごちそうさん』がヒットしたというのだ。
「NHKの朝ドラの場合、『女性の成長譚』、戦争のように『世の中が激動するできごと』、『方言』の3要素を、必ずといっていいほど入れている。『ごちそうさん』には、その要素すべてがうまく入っていた。杏さん演じるめ以子は、嫁いびりにあいながら、見知らぬ土地・大阪とだんだん同化して成長していく。関西弁も途中から話すし、戦争もある。私が出演する『花子とアン』も、この3要素がしっかりと入っています」
そうしたドラマの人気をより加速させるのは、日本人のある特性だとマキタは言う。
「日本人のミーハー欲です。『半沢直樹』も『ごちそうさん』も、次第に視聴率が上がったのは、ドラマのおもしろさはもちろんですが、“世間が騒ぐ”から見るというやじうま視聴者がいたから。行列があると並んでしまうのと同じ心理です。でも、テレビはそうしたお祭り騒ぎを楽しむものでいいのだと思います」
※女性セブン2014年4月17日号