3月29日に閉幕した世界フィギュアスケート選手権大会を最後に引退を発表したフィギュアスケート女子の鈴木明子(29才)。
実はソチ五輪で引退することも考えたが、高橋大輔選手(28)の励ましもあり、出場へ踏み切った。
「(高橋選手が)フリーの前に『最高に楽しんでおいで』と言ってくれたので、『世界一楽しんでくる!』と返しました。ショートのような最高の演技ができずに悔しさも残りましたが、これがまた次の人生につながるのかな、って」(高橋・以下「」内同)
大会期間中に誕生日を迎え、29才になったばかり。6才から始めたフィギュア競技人生では、大きな壁をいくつも乗り越えてきた。
東北福祉大学1年生の時に摂食障害を患い、体重が32㎏まで落ちた。リンクに立てないほど体力が衰え、スケートからも遠ざかったが、「また滑りたい」という一心で、約1年で復帰。再びリンクへ戻ると、トリノで金に輝いた荒川静香(32才)を目標に掲げた。
「当時、荒川さんは24才。勢いや若さではない、大人としての演技には深みがありました。私も20代に入っていたので、“まだ頑張れる”と、励みに思えたんです」
今でこそ、「病気で滑れなくなった時期があるから、ここまで続けてこられた」と語るが、肉類を3年ほど食べられなくなるなど、克服までには壮絶を極めた。3回転ジャンプを覚えたのは、バンクーバー五輪出場後の25才。発育中の10代とは違い、20代半ばでの習得は大変な困難だったという。
絶え間なく新しい挑戦を続け、世界選手権で銅メダルをつかんだのは、2012年。全日本選手権での初優勝は昨年暮れで、「遅咲きの女王」と呼ばれた。ソチ五輪では両足小指を痛めつつも、8位入賞。現役最後の世界選手権では、ショートプログラムで3回転ジャンプを見事に決め、自己ベストを更新してみせた。
幾多の困難も力に変えて夢をつかんできた彼女だからこそ、後輩たちへ向けた熱い思いがある。
「佳菜(村上佳菜子選手)はソチ五輪後、今シーズンでやめようか悩んでいたんです。でも彼女はこれから強くなる。だから『続けたら、もっといいことがあるかもしれないよ』と伝えましたし、私もその姿を見てみたい。真央(浅田真央選手)に関しては、つらい時期を間近で見てきたので、世界選手権を終えて『やりきれた』と笑顔で終えられたことが嬉しかった。今後については真央の気持ちを尊重したいです」
※女性セブン2014年4月17日号