涙にはストレス解消の効果があるといわれるが、泣ける“ツボ”は人それぞれ。今回は、35才・旅行代理店勤務の女性が、家族や恋人の素直な気持ちに触れた心温まるエピソードを告白してくれました。
* * *
私が高校生の時、両親が離婚。原因は母の不倫でした。母は、その相手と再婚するらしく、私は父とふたり暮らしになりました。
専業主婦だった母の代わりに家事は私、とはならず、お互い自分のことは自分でするようになりました。父の洗濯物を洗うのも私のを洗ってもらうのも嫌だし、部屋の掃除も同じです。食事は炊飯だけ私がして、冷凍食品や総菜を電子レンジで温めては、自室で別々の食事。そんな生活のため、会話もほとんどありませんでした。
ある日、登校前に珍しく父が「何時に帰るんだ?」と聞いてきたので、「バイトがあるから20時すぎ」と答えました。でもその日は、私の誕生日。バイト仲間がサプライズで祝ってくれることになり、夕飯をごちそうになって22時過ぎに帰宅することに。家には連絡を入れていませんでした。家に着くと、なんと父が門前に立っていました。
そして、「何時だと思っているんだ、遅くなるなら連絡しろ」と怒鳴られました。「食事は済ませたのか?」と聞かれ、不機嫌そうにうなずくと「そうか」と父は小さく呟いていました。私は怒られたことに腹が立ち、すぐに自室にこもって寝てしまいました。
深夜、飲み物を取りに台所に行くと、テーブルにはおひつに入ったご飯や骨付き肉が置いてあります。さらに冷蔵庫を開けると、白い大きな箱と、長細く切った刺身や卵焼き、きゅうりなどが並んだお皿が入っていました。父はケーキと手巻き寿司で、私の誕生日を祝おうとしてくれていたのです。
私はすぐに父の部屋をノック。「明日早起きして、一緒に手巻き寿司しようよ」と提案すると、父は「朝からヘビーだな」と笑ってくれました。それからは、できる限り一緒に食事をするようになり、父とは以前よりも“親子”になれたかなと思っています。
※女性セブン2014年4月17日号