規制の権限をバックに民間企業や所管の団体にOBを再就職させ、見返りに業界の既得権が守られる天下り問題。そうした構図を壊すためにできたのが国家公務員への「天下り規制」のはずだが、役所は自分たちを縛る規制についてはあの手この手で骨抜きにしてきた。さらに問題なのが、地方の役人の天下りだ。「政策工房」社長の原英史氏が、注目度が低いのをいいことに、今も天下りし放題の状況が続く地方の役人の天下りについて解説する。
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2月の東京都知事選は政策論争が盛り上がることなく終わり、舛添要一・新知事が選出された。本来、選挙戦の過程で「国以上の伏魔殿」とされるこれまでの都政の暗部にどう斬り込み、無駄や不合理をなくしていけるかが議論されるべきだった。
伏魔殿の一端を明らかにするため、筆者が理事を務めるNPO法人万年野党では東京都の天下り問題について調査した。例えば、お台場のビル管理やゆりかもめ運営などを行なう臨海ホールディングスグループには過去4年間に課長級以上だけでも25人の元職員が再就職しているなどの実態が判明した。
選挙期間中、主要候補に対してそうした問題にどう取り組むのかを問う公開質問状を出したが、残念ながら舛添氏を含め満足な答えは一つも返ってこなかった。
データを見比べるとよくわかるが、東京都の天下り問題は国より深刻だ。国の過去1年間の課長級以上の再就職データ(2013年9月公表)を見ると、計1122人の再就職先は営利法人(324人)、自営業(269人)が多く、独立行政法人(11人)、特殊法人(7人)、認可法人(1人)などはごく少ない。
それに対して東京都の過去1年間の課長級以上の再就職データ(2013年11月公表)を見ると、計160人のうち公益団体等39人、監理団体32人、報告団体等16人と、いわゆる外郭団体で過半数を占める。「退職したら外郭団体へ天下り」という昔ながらの構図そのものだ。
※SAPIO2014年4月号