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小山正明・江夏豊・東尾修・山田久志ら開幕投手の心境を述懐

 2014年のプロ野球が開幕した。開幕戦は、数字上は144分の1であっても、その試合は他のものとはまったく違う意味を持つ。「精密機械」の異名を持つ320勝投手、阪神の小山正明氏が初めて開幕マウンドを任されたのは入団2年目のことだった。新人で5勝した実績を買われての抜擢だったが、

「まだ開幕戦の重みなんて感じないで投げたのを覚えている。それが年数を重ねると、色んなことが見えてきた。面白いもので、こういうのは若手の時よりも、ベテランのほうが緊張するんですよ」(小山氏)

 こんなエピソードも残っている。

「主に1990年代に活躍し、開幕投手に指名されたある若手投手の元に、緊張していないか心配した先輩投手が、気を利かせて前夜に電話をした。夫人が出たため、代わってもらうよういったところ、“夫はいびきをかいてよく眠っています”と答えられた。“投手はデリケートでなければプロとして生きていけない”というのが持論だったその先輩投手は、思わずずっこけたそうです」(スポーツ紙記者)

 大エースほどストイックな話が伝わるだけに、この先輩投手の気持ちも無理もない。

 阪神時代、先発を務めていた江夏豊氏。登板前夜には、布団に入った後、相手オーダーとその配球を頭に思い浮かべるのが習慣だった。

 イメージですんなりと打ち取り続け、打者一巡となれば気持ち良く眠れるが、途中で思い通りにならなかった時にはイライラして眠れなかったという。特に開幕の時は、ピタリとはまらないことが多かった。そのため初球は、とにかく“自分の生命線”としていた、外角低めのストレートを投げると決めていたそうだ。

 同じく眠れなかったのは長く西武を支えた東尾修氏。

「早く眠らないといけないと思い、酒の力でも借りて眠ろうとするのですが、神経が昂ぶって、いくら飲んでも酔わないし眠れない。そのため、いつもついつい深酒になってしまっていたら、球場で広岡達朗監督から“お前は開幕だというのに酒臭い息をして”と嫌味をいわれた。こっちの気持ちをまったくわかってくれなかった、と愚痴っていました」(スポーツライターの永谷脩氏)

 阪急で開幕投手を12年連続で務めた山田久志氏にも、前夜のエピソードが残る。山田氏は開幕の何日も前から夫婦のベッドを別にして、孤独と禁欲のストイックな生活を貫き、気持ちを昂ぶらせて開幕を迎えた。それだけに、初球は気持ちをぶつけるど真ん中のストレートだった。

※週刊ポスト2014年4月18日号

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