4月1日から消費税が5%から8%に引き上げられたが、消費増税には、納税者が忘れてはならない公約がある。
増税を決めたのは、野田民主党政権時代(2012年6月)に交わされた民主、自民、公明の三党合意だが、この時に「増税分はすべて社会保障に充てる」というのが国民に対する約束だった。安倍晋三首相も消費税率が3%引き上げられた4月1日の朝、改めて「国の信認を維持するためのもの。全額を社会保障費に充て、子育て支援の充実にも使う」と明言した。
家計が多少苦しくなっても、年金や保険制度が充実するなら仕方ない──そう思って消費増税を渋々容認した有権者は少なくない。
だが、4月から社会保障費は軒並み値上げされた。
国民年金の支給額は昨年10月から段階的に減額されており、昨年4月の支給額と比較すると今年4月はマイナス1141円の6万4400円。一方の保険料の値上げも段階的に進められ、前年4月から月額210円増だ。厚生年金は平均的世帯で保険料が月額約425円アップ、支給額は4015円ダウンである。
医療費も跳ね上がる。この4月の診療報酬改訂に伴い、初診料は従来の2700円から2820円に上がった。消費増税を上回る4.4%の値上げだ。医療費は消費税対象外のはずだが、医療機器やシーツ代の増税による値上げに対応するためだという。さらに今年4月以降に満70歳を迎えた高齢者は、医療費の自己負担が1割から2割へと2倍になる。金額ベースで計算すると平均で2万9000円の負担増だ。
協会けんぽ(全国健康保険組合)の介護保険料も引き上げられる。介護保険の納付は40歳以上に義務づけられているが、今年3月から負担率が0.17%アップ(月給24万円の場合、月額204円)となった。
そうした保険料の引き上げラッシュによって、2014年度の国民負担率(国民所得に対する税と社会保障費の割合)は過去最高の41.6%となる見通しで、安倍政権発足時の2012年から比べて1ポイント上昇している。
社会保障制度の充実のために増税を強いられながら、各種の社会保険料の負担増まで強いられるのだから、まさに“盗人に追銭”。国家的な詐欺というほかない。政治家が約束を守らないから、国民は「こんなはずではなかった」と増税前に買いだめして自己防衛するしかない。
※週刊ポスト2014年4月18日号