今年1月、マルハニチロホールディングス傘下のアクリフーズ群馬工場(4月にマルハニチロに統合)が製造した冷凍食品に農薬マラチオンを混入したとして、同社の元契約社員、阿部利樹被告(49)が逮捕・起訴された。
この事件では、冷凍食品640万個が回収され、消費者からの問い合わせは100万件、健康被害を訴えたのは2800人超に上る。その阿部被告から小社に獄中体験の本を出したいとの手紙が届いたのは、3月のことだった。そこで本誌記者は阿部被告に約60分に及ぶ面会を行なった。
同僚だった工場の従業員(63)によると、阿部被告はもともと「要注意人物」として工場内でマークされていたという。
「阿部はしょっちゅう自分で作っている冷食(冷凍食品)を、勝手に持って帰っていた。ギャーギャー文句垂れたり冷食ぶん投げたり、後先考えない。事件が起きた時点で、アイツはナンバーワンの容疑者だなって。そうしたら1月に入って急に黙りこくって。で、会社こなくなってもう確定だなって思ったら、やっぱり」
阿部被告に真相を尋ねると、「本に書くから」といいながら、事件の動機とみられている職場への不満を明かした。
「正社員にもなれないし、前から100社近く就職の面接受けてたんですよ。だいたい履歴書送り返されたけど。給料改定されてから、いろんな手当もなくされて、これは転職するしかないと思ったんですよね。ボーナスなんて26万円が4万6000円になっちゃって。査定もどういう査定なのかわからなくて、もっといろいろ不満もありましたよ」
──どんな不満?
「それは今後本に書こうと思ってますけどね、工場長に横柄なことをいわれたんですよ。私は改造バイクに乗ってたんですがね、フォルツァ(ホンダのスクーター)。改造に200万円以上、もしかしたら300万近くかかってるかもしれない。それを給料少ないなかで、超切り詰めてギリギリでやっていたんですよ。
そうしたら会社の工場長が会うたびに、『阿部ちゃん、いいバイク乗っているね』って。そこまではいいんだけれど、嫌みで『カネあるねー』っていうんですよ。嫌みですよ、カネなんかないのに。まぁ、そういう辛いこともありまして」
なんと、「カネあるね」と嫌みをいわれたというただそれだけのことが、不満の正体だったのである。
阿部被告は人生の転機となる幼少期の体験も語った。
「小さい頃からビートたけしさんと同じでチック症なんで、(それが原因で)いじめられていました。小学生から中学生ぐらいまで。でも本が売れて映画とかになれば、たけしさんの番組に出れるかもしれないですよ」
──いじめられたことが人生で反発の原因となった?
「それは結構ありましたね。なんだこんなのって。悔しいって気持ちや見返してやろうっていうことはありました」
※週刊ポスト2014年4月18日号