とかくムダが多いと言われるお役所仕事のなかのひとつに、多数のシステムが入り組んで肥大化してきた中央省庁の情報システムがある。このシステムが55年ぶりに作り替えられるにあたり、行政コストが1000分の1になり、人件費を劇的にカットできるシステムの構築について大前研一氏が提唱する。
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今、霞が関で情報システムの一大改革が進行中だ。1959年に気象庁が天気の数値予測のために米IBM製コンピューターを導入して以来、多数の情報通信機器メーカーやITゼネコンなどが絡んで肥大化してきた中央省庁の情報システムが、実に55年ぶりに作り替えられようとしているのだ。
私は1993年に出版した『新・大前研一レポート』(講談社)の中で、国民一人ひとりの生まれた瞬間からの個人情報をすべてデータベース化し、それを国家が一括して管理・保護する「コモンデータベース」という概念を提唱しているが、そういうシステムを構築すれば、行政コストは100分の1、いや1000分の1以下になるはずだ。
そればかりか、2013年度現在で約341万人もいる公務員(国家公務員約64万人、地方公務員約277万人)を大幅に削減し、役所の人件費も劇的にカットできる。
どういうことか? 改めて詳しく説明しよう。
これまで日本では、中央省庁や地方自治体の役所がITゼネコンの言いなりになって、それぞれバラバラに情報システムを構築してきた。霞が関は省庁別だけでなく機能別・部課別・出先機関別、地方自治体は都道府県別・市区町村別に作ってきたのでシステム間の融通が利かず、互いに横には連携していないのである。
たとえば、A市が今まではアナログだった住民登録などをデジタル化するため、コンピューターシステムをITゼネコンのX社に発注したとしよう。するとX社はA市向けシステムの提案書を出してくる。しかし、それは実は隣のB市が導入したシステムとほとんど同じものなのだ。にもかかわらず、A市のシステムとB市のシステムはつながらないのである。
そういう不便な既存のシステムはすべて捨て去り、新しいシステムを構築しなければならない。具体的には、まずシステムの核となる「国家データベース」を作り、それを中心にすべての個人情報を縦にも横にも斜めにも応用できるようにして、中央と地方を問わず、すべての行政サービスに利用する、という設計にすべきである。