芸能

蟹江敬三さん 妻に「いつか三陸に行きたいね」と話していた

 その死はNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で演じた天野アキの祖父・忠兵衛の船出のように突然のことだった。3月30日、胃がんのためこの世を去った蟹江敬三さん(享年69)。

 蟹江さんは高校卒業後、蜷川幸雄(78才)が役者として在籍していた劇団青俳に入団。そこで妻・綾子さん(70才)と出会う。

「年は綾子さんのほうが1つ上だけど、同時期に劇団入りした同期生。寡黙で人づきあいが苦手な蟹江さんにとって、社交的でおしゃべりな綾子さんは特別な存在だったみたいです」(芸能関係者)

 1968年、23才の若さで結婚。それを機に綾子さんは劇団を辞め、蟹江さんを支える決意をする。彼の舞台収入だけではとても生活できないため、彼女も働きに出た。

 ヒット作に恵まれないまま20代から30代へ。悩み続ける蟹江さんを変えたのは、子供たちだった。1973年に長女・栗田桃子(40才)が、1976年に長男・蟹江一平(37才)が誕生。子供たちのためにと、映画やテレビにも活動の場を広げた。

 もちろん子育ても綾子さんに任せきり。蟹江さんが何か言ったことはなかったが、ともに父と同じ俳優の道を選んだ。それを嬉しいとも恨めしいとも言ったことがない蟹江さんだったが、子供たちが出演する舞台には必ず足を運んだ。しかし楽屋に顔を出すことも、感想を言うこともなかったという。ただ次の舞台が始まると必ず会場には蟹江さんの姿があった。

 そして2013年、『あまちゃん』の忠兵衛役を演じる。妻を家に残し、遠洋漁業のために年に10日ほどしか家に帰ってこない忠兵衛。『あまちゃん』では、アキが忠兵衛にそんな生活を続ける理由を聞くと、彼はこう答えていた。

「海が好きなのもある。だが、あえて言うならここが良い所だっていうのを確認するためだな。ほら、夏さんは、北三陸を一歩も出たこと無ぇべ? だからオラが代わりに世界中を旅して回ってよ、いろんな国のいろんな町をこの目で見て回ってよ、んでここがいちばんいいぞって教えてやるんだ」

 死の13日前まで収録をするなど俳優の仕事をこよなく愛した蟹江さん。しかし、いろいろな役になりきりながらも、帰る港は綾子さんの待つ家。綾子さんの夫でいる時間は何より大切だったのだ。

「落ち着いたら、いつか一緒に三陸に行きたいね」

 蟹江さんは妻にそんな旅行の約束もしていたという。しかし、蟹江さんは亡くなる2週間ほど前に緊急入院すると、そのまま逝ってしまった。

「奥さんのことももちろんだけど、蟹江さんは息子さんのことも心残りだったと思います。“息子が一人前になったら、いつかは共演したい”って言っていましたから」(蟹江さんの知人)

※女性セブン2014年4月24日号

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