消費増税によって日本経済はどれほどのダメージを受けるのか。特に大きな打撃が予想されるのは自動車や住宅といった耐久消費財である。
日本自動車工業会(自工会)によれば消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年度の国内新車販売台数は628万台で、前年度の729万台から14%も減少した。
自工会会長を務める豊田章男・トヨタ自動車社長は3月20日の会見で「2014年度の国内新車販売見通しは475万台」と発表。これは2013年度(563万台)から16%の減少となり、前回増税時よりひどいマイナスである。
大新聞は「駆け込み需要の反動」とする紋切り型の報道ばかりだが、駆け込み需要があった2013年度の販売台数は前年度比プラス8%にすぎず、「反動」のほうが明らかに大きい。500万台が国内工場の稼働維持の目安とされる。それを割り込むと生産調整→人員削減→さらなる景気悪化と負のスパイラルに陥る危険が大きい。
さらに自工会が昨年8月に公表したリポートでは2015年10月に政府が予定通り消費税を10%に増税した場合、翌年度の販売台数は353万台にまで落ち込み〈国内販売に致命的な打撃〉だとしている。
2008年度に500万台を割った際に28年ぶりと騒がれたが、350万台であれば1970年の水準すら下回る数字だ。
住宅業界も深刻だ。住宅着工統計で前回増税時の数字を見ると、1996年度の163万戸から1997年度134万戸、1998年度118万戸と市場は急速に縮小。その後、持ち直すことなく近年は100万戸を切っていた。昨年度は97万戸だったが今年度は約10%減の89万戸となる見通しだ(住宅生産団体連合会の予測)。
増税の影響は明らかで、既に3月上旬の大手住宅メーカーの受注速報では前年同月比30%以上の大幅減となる社まであった。税率5%が適用されるのは「3月末までに引き渡しの分譲住宅」(4月以降の引き渡しでも昨年9月までの契約ならば5%適用)のため、受注ベースでは一足先に冷え込みが始まっている。
業界では既に10%への税率引き上げによるさらなる失速を懸念する声があがっている。
第一生命経済研究所主席エコノミスト・永濱利廣氏が、1997年増税時のデータをもとに税率が10%になった場合の影響を試算したところ、住宅着工件数は2016年度に70万戸(2013年度実績から28%減)まで落ち込むとの結果が出た。
※SAPIO2014年5月号