最近の疫学研究では「ちょっと太っている人のほうが長生きだ」という結果が出ている。日本では肥満と判定されるBMI(体型を評価する指標:体重÷身長の2乗)25前後の人が一番長生きだという。
一方、逆の疫学研究もある。スウェーデンの研究では、小太りの男性の場合、メタボでなくても、死亡率、心血管系イベント発生率は体重とともに増えていくという結果が出ている。また、100歳以上の長寿者の場合、男女ともBMIは平均で19~21で、25を超える人は稀だ。
一体、長生きなのは痩せ型と小太り体型のどちらなのか。『アンチエイジング・バトル最終決着』(朝日新書)という話題書を上梓した坪田一男・慶應義塾大学医学部教授(日本抗加齢医学会の理事長)は、こう指摘する。
「スウェーデンの研究が優れているのは、他の研究と違って解析期間が30年と長いことです。小太りグループと標準体重グループで比較すると、最初の10年は死亡率や心血管系イベント発生率で差はないが、10年を超えると差が出てくる。つまり、小太りの弊害が出てくるには時間がかかるということです。
これまでのさまざまな研究で、小太りが2型糖尿病や高血圧などの生活習慣病や、一部のがん、関節炎などのリスクを高めることははっきりしています。だから、40~50歳ぐらいまではBMIが低いほうがリスクは低いはず。小太りは肥満に移行しやすく、一度太ると体重は戻りにくくなる。
ではなぜ、BMIが25くらいの人が長生きという研究結果が出ているのかというと、65歳を超えたあたりから、栄養不足やタンパク質不足によるリスクのほうが大きくなるからで、この年代だけを対象に調査すれば、小太りが長生きという結果になるということです。
つまり、若い頃から中年までは標準体重をキープし、高齢になったら栄養不足にならないよう、小太りになるのがベストです」
※週刊ポスト2014年4月18日号