安倍晋三政権の強硬路線に不満を抱く自民党議員も多いとも関係者からは囁かれている。だが、大物議員がこぞって息を潜めるのは、今夏に予定される内閣改造を見越しているからだろう。
安倍首相との不協和音が伝えられる石破茂幹事長や懐刀の菅義偉官房長官の処遇が注目されているが、ここにきて党の要といわれる幹事長候補に、意外な人物が浮上してきているという。小渕優子氏(40)である。
「まだ若く、しかも女性ですから、女性活用を掲げる安倍首相の意にも適っている。実現すれば内閣改造の最大のサプライズになる」(大手紙政治部記者)
小渕氏は首相在職中に倒れ、非業の死を遂げた小渕恵三氏(享年62)の二女。成城大学卒業後、TBSに就職。2000年5月に父が脳梗塞で死去すると、同年6月の衆院選に後継者として立候補。当選時は弱冠26歳だった。33歳で第一子を出産。麻生内閣時に内閣府特命担当大臣(男女共同参画、少子化対策)に就任すると、在任時の2009年2月には閣僚として初の妊娠を発表した。
「(ママさん政治家として)主婦ウケがいいのは自民党議員としては貴重な存在」と政治評論家の浅川博忠氏が語るように、応援演説では小泉進次郎氏(33)に次ぐ党内の人気者である。
当選5回、40歳での幹事長就任は「まだ早い」という声も強い。しかし安倍首相にはこんな思惑があった。
「安倍氏が意図するのは、要職から外すことで党内のライバルの総理の芽をつぶし、“次の次”の政治リーダーを育てるというもの。長期政権を目論む人事案として“小渕幹事長”は理に適う。小泉首相が何の実績も残していない安倍氏を2003年に幹事長に据えた手法と酷似する。安倍氏が幹事長になったのは当選3回の時でした」(前出・政治部記者)
小渕氏なら安倍首相の当面の敵にはならず、女性の積極活用や若返りのプラスイメージから、内閣支持率上昇も期待できる。さらに安倍首相は、今年11月に控えた沖縄県知事選への影響を見据えているという。
「恵三氏は沖縄と縁が深い。早稲田の学生だった頃、総長の大濱信泉氏が沖縄出身だったこともあって、まだ返還前の沖縄に幾度も渡って返還活動をしていた。その当時からの幅広い人脈があるうえ、沖縄サミットの実現にも尽力したことで、沖縄での“小渕人気”は今でも根強い。
優子さんが重要ポストについて応援に入れば、“あの小渕さんの娘さんなら”と県民感情が和らぐのでは、との算段もあるのでしょう」(永田町関係者)
普天間飛行場の辺野古移設に反発が強い沖縄では、さしもの安倍首相も強い逆風にさらされる。そうした流れを変える役割を、小渕氏に期待しているというのだ。
※週刊ポスト2014年4月25日号