黒田東彦・日銀総裁の「異次元の金融緩和」、いわゆる“黒田バズーカ”が放たれてから早1年。為替は1ドル=90円台から100円台への円安に転じ、日経平均株価も一時は1万6000円台への回復を見せた。
しかし、その効果は長続きしなかった。日銀が4月に公表した1年後の企業物価見通しは、目標の2%を下回る1.5%の上昇にとどまる。足元では4月からの消費増税で景気の腰折れも懸念されている。
株価はそんな状況を見越して年初から停滞を続け、市場からは“黒田バズーカ第2弾”と位置付けられる「追加緩和」を求める声が高く、実施はもはや既定路線だ。信州大学経済学部の真壁昭夫教授の解説。
「2015年10月に予定される10%への消費税引き上げの最終判断は今年7~9月期のGDP(国内総生産)で決まるため、財務省は何としてもプラスにしないといけないと考えている。財務省出身の黒田総裁にとってみれば、4~6月期の落ち込みを挽回すべく、7月のタイミングで追加緩和を打ち出すのがベストシナリオではないか」
市場関係者の間でも「7月本命説」がまことしやかに囁かれ、すでに追加緩和に合わせて、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が資産配分の見直しを発表するという観測まで浮上している。国民の年金資金を株式市場に投入して株価を上げようという作戦だ。
仮にGPIFが株式比率を1%上げれば、市場には1兆円が流れ込むとされ、株価上昇は必至。同時期に発表することで、緩和効果はより高まるため、この時期が有力視されているのだ。
ところが、官邸サイドはそこまで悠長な見方をしていないという。
「増税で4~6月期の景気が落ち込むのは既定路線。当初はどの程度落ち込むかを見てから追加緩和の実施を検討する予定だったが、そこまで待っていたのでは外国人投資家の日本売りが加速して、株価下落は避けられない。6月の新成長戦略発表と同時期、あるいは5月20~21日の金融政策決定会合で日銀に発表させたいという思惑がある」(官邸関係者)