今シーズンからヤンキースの投手となった田中将大が、日米通算100勝目をメジャーデビュー戦の勝利で飾った。かつて、その勝ち運の強さから「マー君、神の子、不思議な子」と野村勝也・楽天監督(当時)と言われた勝負強さも持っているが、その「神の子」の気になる成績はいかに。『プロ野球なんでもランキング』(イースト・プレス刊)の著者・広尾晃氏が分析する。
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日本のプロ野球史上、被本塁打、奪三振、与四死球だけで投手の実力を測る評価指数「DIPS」で、優秀とされる2を切ったのは、ダルビッシュと田中だけです。田中は2012年は勝ち星こそ少ないが、それでも奪三振王になり、続く2013年はプロ野球記録を塗り替える24勝0敗を達成しました。これだけ見れば、メジャー1年目で、いきなりサイ・ヤング賞の候補になる可能性を秘めています。
一方、不安材料もあります。目につくのは、田中が好調の年(表年)と不調の年(裏年)を交互に繰り返す「隔年投手」ということです。これは球数が大きく関係してきます。
投げ過ぎた翌年は、不振でローテーションに穴を開けて投球数が減ります。24勝した昨年はレギュラーシーズン2981球、ポストシーズン438球と、キャリアを通じて最多の3400球以上を投じている。昨春にはWBCでも力投していることも気になる。つまり、その影響が出る今年は「裏年」になる公算が高いといえるのです。
もう1つの注目すべきデータが「援護率」です。味方打線が何点取ってくれるのかを表わす数字ですが、楽天時代、7年間の田中の援護率は3点台後半から4点台前半。それが昨年は6.37と大幅アップしていました。実は、驚異の24連勝は援護率の高さの賜物だったともいえるのです。勝利に大きく関係してきますので、細かく見る必要がある。いくつかのパターンに分けて検証してみました。
さて、これらの数値から今年の成績を推測します。
まず最も理想的なケース。何らかの事情で、今年が「表年」になったと仮定し、さらに打線が、所属するア・リーグの援護率の高い選手並みに打ってくれるならば、「16勝8敗」は固い。
ただ、最近のヤンキースは全般的に援護率が低い。特に、黒田博樹が登板した試合はより低い数値に留まることが多いのです。理由はハッキリしませんが、ともかく、黒田の登板試合並みに援護率が下がれば、表年であっても成績は「13勝11敗」に下降するでしょう。
それに、前述したように本来なら今年は「裏年」です。このため総合的に見て、「11勝9敗」あたりが現実的なところではないかと見ています。
※週刊ポスト2014年4月25日号