イチローが盗塁! すぐさま「物言い」がつき、果たして盗塁はセーフかアウトか……。メジャーリーグ(MLB)で今季から導入された「チャレンジ制」とは、両軍の監督がビデオ判定を求めることができるという新たなルールだ。
チャレンジ権は1試合のうち原則1回、「ストライクかボールか」などを除く、ほとんどのプレーに行使できる(判定が覆った場合はアピール権が消失せず、もう1度まで使用可能)。かつてのビデオ判定のように、日本球界にも導入されるのではないかと賛否両論が起きている。
日本球界へうまく導入するにはどうすれば良いのか。野球評論家の広澤克実氏は、チャレンジ制そのものには反対といいながらも、こう語る。
「時間を止めて抗議する以上、観客に迷惑をかけているわけですから、何らかのペナルティを設けてクレームさせるべきです。例えばNFLの場合、誤審が認められないとタイムアウトが1回減る。MLBのように誤審で権利が増える仕組みよりも、審判の判定が正しかったと判明したら、クレームをつけた側にワンアウトを科すなど、罰則を与える方が緊張感があっていいのではないでしょうか」
パ・リーグの下審判部長、前川芳男氏が「運用するためにはルールブックごと変える必要が出てくる」というとおり、チャレンジ制導入にあたっては、ただ新技術を導入するだけではすみそうにない。やはりルールそのものを変えることは避けられない。しかし確かにこの方式なら、試合の流れを変える目的での安易なチャレンジを防ぐこともできそうだ。
審判への抗議などで退場回数8回を誇る、金田正一氏はこう話す。
「審判が下手になったんだから仕方ないだろうな。時代の流れというやつだ。しかし監督の抗議は野球の醍醐味の1つでもある。判定が覆らないとわかっていても猛抗議しなきゃいけない時もあるし、それでカーッとなってつい手も出る。そんな退場シーンが見られなくなるのも、寂しいものだと思うがな」
確かに、ベースを引っ剥がしてぶん投げたり、後ろ手を組んで審判とつばぜり合いしたり……、そんな“熱いシーン”がなくなるのかもしれない。
※週刊ポスト2014年4月25日号