日本野球機構(NPB)が公式戦で使用する統一球の反発係数が規定より高かったと発表して以来、「飛ぶボール」問題が今シーズンも騒がしい。そもそも「昨年より飛ぶボール」は、試合に影響を与えていたのだろうか。
確かに今年は、開幕直後から、大味な試合が多い印象ではある。開幕戦からして巨人は大量12点を挙げ、ソフトバンクも11点。その後も2桁得点を挙げるチームが続出し、中でも4月5日のヤクルト-阪神戦は、両軍合わせて30安打、12-11でヤクルトが勝利する試合となった。
しかし各試合のデータを詳しく検証した結果、ある結論が導き出された。「飛ぶボール」の影響は、今のところデータ上は確認できないのである。1試合あたりの球場別本塁打数をみると、2012年が0.70、2013年は1.01、4月14日終了現在の2014年は1.06と、昨年と大きく変わらないことが分かる(4月14日終了時点)。データ解析は、本誌ではもうお馴染みの『プロ野球なんでもランキング』の著者・広尾晃氏だ。
「球場別の1試合当たりでの被本塁打率を見ると、昨年の統一球改変時ほど影響がなかったことがわかります。今回、NPBは珍しく迅速に対応し、反発係数の測定値を公表しましたが、そこにはおそらく不正な改変はしていない、という自信があったからなんでしょう」
例えば昨年の東京ドームや神宮球場では、1試合当たりのホームラン数が1.65や1.44という、2012年に比べて高い数値を示したが、今年はそこまで上昇してはいない(東京Dで1.33、神宮は1.40)。横浜のように大幅に増えた球場もあったが、他球場は概ね昨年比で下回っているという結果だった。
また広尾氏によれば、平均打率や防御率で比べてみても、セ・リーグこそ昨年より「打高投低」が見られるものの、パではむしろはっきり「打低」の傾向が見て取れたという。つまりデータで見る限り“飛ぶボール”では、今年の野球が何かが変わった、とは言い切れないのだ。
ボールの反発力は測定結果通り上がっていても、ボールの影響によって単純にホームランが量産されていたり、やたら得点ばかりが増えていたわけではなかったのである。
※週刊ポスト2014年5月2日号