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南北朝鮮統一の引き金は金正恩体制の崩壊以外に考えにくい

 今年に入り、韓国で「南北統一」議論が盛んになっている。統一の経済メリットを声高に叫ぶ朴槿恵大統領だが、現実には非常に厳しい南北統一シナリオが予想される。

 現実には南北統一は悲惨だ。朴大統領はドイツ紙の取材に「いつ、どのように南北が統一されるかは誰も予想できない」と答えている。
 
 北との対話が進まない以上、「朴大統領の描く平和統一は非現実的」と専門家は口をそろえる。統一の引き金となるのは「金正恩体制の崩壊」以外に考えにくい。外交評論家の井野誠一氏が語る。

「北の崩壊シナリオには3つのパターンが考えられます。【1】民衆による大量脱北が連鎖的に起こり、全土で騒乱が発生。【2】金正恩が暗殺、或いは事故や病気による急死をきっかけに政権が揺らぐ。【3】軍部が金正恩体制に反旗を翻す。いずれも、反体制派が混乱に乗じて蜂起し、内乱・内戦に発展する可能性があります」

 早稲田大学国際教養学部教授の重村智計氏もこう見る。

「北では過去に何度もクーデター未遂が起きている。代表的なのは92年4月の建軍記念日を狙ったクーデター計画です。ソ連留学組の将校42人がパレードに乗じて金日成殺害を図りましたが、直前に彼らの戦車部隊が別部隊と交代したため未遂に終わりました。

 もし、クーデターが起きれば韓国にも被害が及びます。難民が大量流入するだけでなく、武装した逃亡兵も韓国、中国に押し寄せる。数千から数万の兵士が越境してきたとき、どのようにして武装解除させるかという課題もあります。自暴自棄になった北の残存部隊が韓国にミサイル攻撃を仕掛ける可能性もゼロではない」
 
 昨年末に40%代後半まで低下した朴大統領の支持率は「統一ブーム」によって62.7%(中央日報調べ)まで回復した。朴大統領は「絵に描いた餅」でいつまで民心を惑わすつもりなのだろうか。

※SAPIO2014年5月号

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