「晩餐会が催されます。出席される意思はございますか」──23日に来日するオバマ大統領を国賓として迎えて開かれる宮中晩餐会。新聞やテレビで見聞きすることはあっても、所詮庶民には窺い知れない遠い夢の世界である。
招待客には、まず冒頭の厳かな口調の電話が入る。恭しく出席の旨を伝えると、数日後、一通の封書が届く。天皇皇后両陛下主催であることを示す菊のご紋章。選ばれし者だけを誘うこの招待状、当然人の目に触れることはほとんどない。
招待状を手にすることができるのはセレブ中のセレブばかりである。皇族、総理大臣、衆参両院議長、最高裁判所長官を筆頭に、国務大臣や経済界のトップほか、ノーベル賞受賞者など約150人。
宴のメニューは、明治以降の慣例に従いフレンチのフルコース。肉料理は御料牧場産の羊で、臭みを取るため毎日シャワーを浴びせたという逸話も残る。大皿に盛り付けられた料理を取り分けて食べるのがしきたり。司会進行役はなく、宮内庁楽部が奏でる日本の唱歌や国賓が愛好する音楽を聴きながら、隣席のVIPと歓談する。
安倍政権以降、日米関係に微妙なひずみを抱えるなか迎える主賓・オバマ大統領。伝統の宴が関係強化の一助となるか。
※週刊ポスト2014年5月2日号