福岡県筑後市で発覚した連続失踪事件。福岡県警は別件で逮捕したリサイクルショップ経営者の中尾伸也(47)と妻の知佐(45)の両容疑者が失踪者の「行方」を知るとみて、夫婦を別々の警察署に移送し、取り調べを進めている。
伸也容疑者を古くから知る関係者によれば、同容疑者は地元の工業高校を1、2か月で中退後、ホテルマンを務めた後、福岡・中洲の飲食店に流れついたという。そこで働いていた知佐容疑者と出会って結婚。二人は結婚を機に水商売とは別の職を求めた。
その後、二人が生計を立てる手段として選んだのは、魚介類、干物の行商だったという。だが、干物の行商では暮らしが成り立たなくなり、廃業した。
これに前後して始めたのが喫茶店経営だった。伸也容疑者の知人男性が話す。
「八女(筑後市の隣の市)に二人で喫茶店を出すとか言うてね。『八女なんて、友達もおらんし、大丈夫とね?』って聞いたんですよね。そしたらシンちゃんが『前のオーナーから、秘伝のレシピを教えてもらっとるから、大丈夫』と言うとです。でも、潰れた店のレシピをまたメニューに出して、大丈夫なんかと」
愛娘の名前を店名に冠し、繁盛を願った喫茶店開業だったが、知人の懸念は的中した。
それどころか、営業がうまくいかなくなった両容疑者は裏稼業に足を踏み入れていくのである。2001年頃のことだ。この頃、二人が住んでいたアパートの大家は証言する。
「今回の事件のことを記者さんから聞かされてびっくりしてねぇ。だって、当時はごく普通の夫婦で見た目も地味。娘さんが少し離れた場所にある学校に通っていたようで、旦那さんが車で送っていましたよ」
だが、既に夫婦には別の顔があった。
「喫茶店は裏カジノができる店として、その筋の人間には有名でした。ポーカーゲーム機も店に置いていた。もちろん違法です。地元の暴力団の関係者も入り浸り、当初は相当客も入っていたと聞いています」(捜査関係者)
懐も潤っていたようで、伸也容疑者が高級スーツやブランド品で着飾り、繁華街を闊歩する姿が目撃されている。
ただし、裏稼業は更なる苦難を招いたようだ。
「極道のシマ争いか警察当局の摘発か、もしくは単に客足が途絶えていったのか。すぐに経営が立ち行かなくなりました」(地元紙記者)
中尾家の生活も困窮を極めた。小誌が確認したところ、1999年にまず伸也容疑者が自己破産。また、2002年に知佐容疑者が自己破産。さらにはこの時、伸也容疑者の両親と祖母まで同時に自己破産を福岡地裁に申し立てている。
「なぜ、ここまで暮らしに追い詰められるようになったのかわかりません。一説には、伸也容疑者は裏カジノの経営に携わりながら、自身もギャンブルにのめり込んでいったという話もあります」(大手紙社会部記者)
結局、喫茶店を畳んだ二人は2003年、肉親のつてを辿って現在のリサイクルショップを開いた。
※週刊ポスト2014年5月2日号