日本野球機構(NPB)が公式戦の統一球が「飛ぶ」ボールだったと発表し、製造元のミズノも認めて以来、「飛ぶ」か「飛ばない」かで騒がしい日本球界だが、「フォークの神様」こと杉下茂氏は「投手が低めにボールを集めればよい」とバッサリ。400勝投手の金田正一氏は、もっと手厳しい。
「そんなに『飛ぶボール』が問題なのであれば、一度昔のラビットボールでやってみたらいいよ。投手なら、いかに今が恵まれているかがわかるぞ。あの時代は今よりもっと飛んでいた。なんせ打球が速すぎて見えないんだからな。おまけに昔は細工して、自分のチームの攻撃の時だけ、飛ぶボールを使うチームまであったくらいだ。その点、少なくとも今はお互い平等なんだから、文句をたれるほうが悪いわい」
ラビットボールとは反発係数が高いボールのことで、なかでも1949年~1950年にNPBで使用された、特に反発力の強いボールのことをここでは指している。それ以前のボールより品質は良くなったが、製造工程で強く乾燥させて製造したため反発力が上がり、本塁打数が激増。ボールの反発係数を定めるきっかけとなったボールでもあった。そして金田氏は、今の選手たちに活を入れる。
「投手が圧倒的に不利だったラビットボール時代でも、ワシには収穫があったよ。打球が速いからピッチャーライナーがとにかく恐ろしくてな。ライナーが返ってきても大丈夫なように、投げた後で構えなくちゃいけない。そのおかげでピッチングフォームが良くなったんだ。今の選手は何でもマイナスに考えるが、何事も自分のためになるように意識を変えなくてはいかん。“弘法筆を選ばず”じゃ。ガタガタ抜かす前に練習しなさい」
※週刊ポスト2014年5月2日号