日本の政治家や役人は外圧にからきし弱い。メディアはもっと弱い。だから外国のエラそうな人に、上から目線で「増税せよ」といわせれば、国民も“へへぇー”とひれ伏して従うと思い込んでいる。
財界と財務省の意を汲む日経新聞がそのために持ち出した切り札が国際機関「経済協力開発機構」(OECD)のグリア事務総長なる人物だ。
同紙は「日本の消費税、15%必要 OECD事務総長」(4月8日付)との見出しでとんでもない記事を報じた。
〈グリア氏は「OECD加盟国の付加価値税は平均で20%だ」と説明。「日本は10%に引き上げてもまだ半分にすぎない」と話し、高齢化社会への対応として、2015年に予定する10%を超えて、さらに引き上げる必要があると述べた〉。
消費税15%? 何言ってんだか。
グリア氏はメキシコの経済学者で、同国が通貨危機に陥った時は外務大臣、その後、財務大臣を務めて経済を立て直したことで知られるが、だとしても、日本の消費税(付加価値税)の税率を加盟国平均の20%と単純に比べて「低いから15%まで上げよ」という論理はレベルが低すぎる。
欧州諸国の消費税の標準税率は高く見えるが、日本と違って食料品など品目によって数段階の軽減税率が適用されているため、実際の税率(実効税率)ははるかに低い。スペインの実効税率は標準税率(21%)の半分以下という試算もある。グリア氏のいうように日本が全品目で税率を15%まで上げれば、おそらく加盟国トップクラスの消費税重税国家になる。
日本はOECDに米国に次ぐ2番目(18%)もの巨額な拠出金を出している。その大スポンサーの国民に「もっと増税を」などと言える立場か。怒りを通り越して笑ってしまう。
グリア氏の主張にまともなツッコミを入れるわけでもなく、有り難がって記事にする日経には、“ガイジン”の口を借りて「財務省と財界の主張」を代弁させようという魂胆があることが見え見えだ。
※週刊ポスト2014年5月2日号