春眠暁を覚えずという言葉があるが、現代では逆に眠れなくて困っている人の方が多い。毎朝午前4時半に起床し、質がよい睡眠をとっているというベストセラー『がんばらない』で知られる鎌田實医師が、睡眠が体におよぼす影響と、良質な睡眠について解説する。
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いまや、日本には不眠症患者が2000万人いるといわれている。日本人の5~6人に1人が不眠症に悩んでいる計算になる。睡眠導入剤の使用量も増加傾向にある。
他に、こんなデータもある。
日中働く看護師を1とすると、昼夜交代勤務の看護師は1.8倍ほど乳がんの発生率が上がるという。夜勤だけの看護師は、さらに2.9倍にもハネ上がる。
ハーバード大学で付属の病院に勤める看護師で調査したところ、夜勤に30年以上ついた看護師は、日中勤務の看護師よりも1.36倍発がんリスクが高くなることも分かった。
これが男性の場合では前立腺がんのリスクになる。
工場やファミリーレストラン、遊戯施設や病院、福祉施設などで夜間勤務に就く人は日本人の5人に1人。要注意だし、睡眠はこんなに深く健康と関係している。
また勤務ではなく、電灯をつけて明るい状態で眠る人は、暗闇で眠る人に比べて、血液中のメラトニンが5分の1しか作られないという結果もある。
このメラトニンが大事。メラトニンはがんを抑制してくれる物質なのだ。作られる量が少ないと、がんになるリスクも上がる。
アメリカでは、メラトニンの効能が注目されてサプリメントも売られているほど。日本ではサプリメントは売られていないが、いち早くネットで輸入して飲んでいる人もいる。
しかし無理してサプリメントを飲む必要はない。というのも、メラトニンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンから作られるからだ。そのセロトニンの材料はトリプトファンという必須アミノ酸だ。トリプトファンを多く含む食品を食べれば、メラトニンの材料は自然に増えるのである。
その食品とは、肉やチーズ、魚、牛乳、大豆、卵、バナナなどである。他には、牡蠣や高野豆腐に多く含まれている亜鉛はセロトニンの合成に必須の栄養素だといわれている。
そういったものを食べて、太陽の光をたっぷり浴び、ウォーキングなどのリズミカルな運動をするとセロトニンが分泌され、夜になるとメラトニンになるのである。セロトニンがたくさん分泌される人はメラトニンもたくさん分泌する。その結果、夜も眠りやすくなるのだ。
そして、夜、メラトニンを多く分泌させようと思ったら、午後10時以降は明るすぎる照明の下にはいないこと。出来ればパソコンでの作業もしない。電源オフにするとメラトニンはもっとできやすくなる。
※週刊ポスト2014年5月2日号