国内

ウォルフレン氏 安倍氏はレーガン氏よりブッシュ氏に似てる

『日本/権力構造の謎』『人間を幸福にしない日本というシステム』などの著作で知られるカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学教授)。日本研究の第一人者は、現在の安倍晋三政権をどう見ているのか。

 * * *
 安倍氏は日米首脳会談に先立って来日した米共和党議員から、「総理は“日本のロナルド・レーガン”と呼ばれ、共和党では特別な誉め言葉だ」といわれて相好を崩していたという。

 だが、安倍氏を米共和党の大統領に喩えるならば、ふさわしいのはレーガンではなく、“坊ちゃん政治家”ぶりをいかんなく発揮したジョージ・W・ブッシュ大統領ではないか。彼も「尊敬する政治家は祖父・岸信介」と言い続ける安倍氏と同様に「父(ブッシュ・シニア大統領)を越えたい」という二世政治家らしい野望を隠さなかった。

 政治手法も似ている。ブッシュ氏は9.11以降、「テロとの戦い」を掲げ、アフガンやイラクで軍事力を行使した。彼は、9.11の悲劇を、米国内の貧困や格差の拡大という経済問題から国民の不満をそらす格好の材料に利用したのだ。冷戦崩壊でビジネスを失っていた米国の軍産複合体、石油産業、戦争特需を期待するウォール街は戦争を歓迎し、多くの米国民も当初は「強いアメリカ」を熱烈に支持した。

 しかし、米国の介入は新たなテロを招き、イラクやアフガンに無秩序をもたらした。米国が担っていた「世界の警察」の威信と信頼を大きく失墜させる結果になった。

 スケールこそ違うが、現在の安倍氏の中国や韓国に対する姿勢は、そのブッシュ氏の失敗と重なって見える。

 日本では民主党政権時代、不況の中で震災復興は進まず、原発もなし崩しに再稼働されて国民の不安と不満が募っていた。そこに登場した安倍氏はタカ派発言で中国と韓国を挑発し、国民は「強い安倍」を歓迎した。私には安倍氏がブッシュ氏と同じように、国民の不満の矛先を巧妙に中国や韓国への反感に向けさせたように思える。そして高い支持率の中で増税を実施し、軍備を増強し、原発も推進している。

 しかし、米国の国民がブッシュの戦争が米国に何の利益ももたらさなかったことに気づいたように、日本の国民もいずれ、安倍政治が国民に安全も利益ももたらさなかったことに気づく日がくるだろう。

※週刊ポスト2014年5月9・16日号

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン