少子高齢化が進む日本では、100年以上生きてきた「百寿者」も急増している。43年連続で増え続けて、2012年には5万人を突破した。今から100年前の1915年の出生数は約180万人だから、戦争をも生き抜いた約28人に1人のスーパーエリートというわけだ。男女比は1対7、105歳以上に区切ると1対9と、圧倒的な“女高男低”だ。
1992年から100歳以上を対象に医学調査を始めた慶応義塾大学医学部老年内科の広瀬信義医師は、これまでに650人以上の百寿者に会い、対面調査を行なってきた。
「調査では、採血などの医学調査のほか、生活歴や家族歴、病歴、幸福感なども尋ねています」
その調査の結果、明らかになったことはいくつもある。医学的特徴でいえば、「認知症がなく自立しており、視聴覚障害もない人の割合は百寿者の4%程度です。3分の2の方が薬を飲んでいます」という。そこには明らかな傾向がある。
「糖尿病の罹患率は6%しかありません。70代の罹患率は20~30%ですので、かなり少ないことがわかります。百寿者に糖尿病が少ないのは日本だけでなく、世界各国で同じ結果が発表されています」(広瀬氏・以下同)
糖尿病になりにくい、とはどういうことなのか。
「食事制限が必要ないので、好きなものを自由に食べられます。それから、長生きする人は老化が遅いという報告があります」
老化が遅ければ、高齢者特有の病気に罹る年齢が遅くなる。日本人の三大死因であるがん・脳卒中・心疾患についても調査した結果、百寿者のうち、80歳前にこういった病気になり、それを乗り越えて100歳になったいわゆる普通の老化速度の人は1割程度。それに比べて、80歳から100歳の間で罹患して乗り越えた人は3割、そして100歳までいっさい罹っていない人が6割いるという。
「超音波で頸動脈を調べた結果、長寿者は動脈硬化が少ないことがわかりました。一般的には、90代で8割くらいの人に頸動脈の動脈硬化が見られるのですが、百寿者の方では、6割くらいしかいません。この数字は、一般の80代の方と同じくらいです」
それは体質なのか、環境によるものなのかはわかっていないという。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号