60歳以降に働く場合、それ以前とは違った働き方をする必要がある。年金の受給が始まったり、行政の給付金が受け取れたり、年齢によって制度の変更があったりするからだ。
最も気をつけなければならないのが、働き方によって年金がカットされる「在職老齢年金」制度だ。正社員として厚生年金に加入して働くと、給与と年金の合計が一定の上限額を超えれば、年金額が減らされてしまう。65歳未満は上限額が28万円で、65歳以上は46万円だ。
たとえば、60歳時点の月給が40万円だったAさん(62歳)が、それ以降も正社員として再雇用され、24万円の月給をもらっている場合、一般的な年金額10万円と月給の合計が34万円となり、上限額(28万円)をオーバーする。このケースでは、上限額との差額の6万円の2分の1にあたる3万円がカットされ、年金額は7万円に下がる。
年金カットはそれだけではない。前述した高年齢雇用継続給付金をもらっている場合、さらに年金額は減る。「高年齢雇用継続給付金と年金の併給調整」という仕組みで、年金から給付金の40%が減額されることになる。
Aさんの給付金額は3万6000円。すると、年金額は7万円から、給付金額の40%にあたる1万4400円が差し引かれ、5万5600円となる。結局、Aさんの月収は「給料24万円+給付金3万6000円+年金5万5600円=33万1600円」となるが、年金はトータルで4万4400円も減額されていることになる。
ここでは、年金をいかに減らされずに働くかがポイント。
「厚生年金に加入せずに働けば、在職老齢年金制度は適用されず、年金はカットされません。正社員の4分の3未満の時間で働けば、制度上、厚生年金に加入しなくて済みます。また、前述のように雇用継続給付は週20時間以上働く人に適用されます。そうした条件から、『週20時間以上、正社員の4分の3未満』で働けば、年金も給付金も総取りできる理想の働き方になります」(社会保険労務士の北村庄吾氏)
正社員の4分の3の労働時間とはいえ、あくまでそう契約するだけで、オーバーした時間分は残業代として受け取ればいいだけだ。
また、正社員ではなく、「個人事業主」として会社と再雇用契約を結ぶというのも有効だ。これでも厚生年金に加入する必要はなく、年金はカットされない。
「ただし、大卒(22歳)で就職したほとんどの人が60歳まで働いても、基礎年金の加入期間の上限である40年まで、加入歴が2年足りない。満額受給するために、個人で国民年金に加入しておけば、年金額も増やせます」(北村氏)
※週刊ポスト2014年5月9・16日号