10年ほど前まで、毎試合放送されていた巨人戦中継が地上波からほぼ消滅している。それに比例するかのように、スポーツニュースに野球が占める割合も減っている。テレビ局関係者が話す。
「夜のニュースで、野球のハイライトを伝えても数字が取れない。だから極力短くせざるを得ない。わかりやすい例で言うと、フジテレビの『すぽると!』は4月から大幅に時間を短縮した。野球関連の数字が良くないことと無関係ではありません」
たしかに、4月の巨人戦中継の視聴率を見ても、1ケタが続いた。もはや、プロ野球では数字が取れないのだろうか。
「かつてプロ野球のハイライトを楽しみにしていた人たちは、CS放送に流れている。『プロ野球ニュース』(フジテレビONE)などでは、詳細に試合経過を伝えてくれる。10分近く振り返る試合もあるし、地上波とは圧倒的に情報量が違いますからね。
本当に野球が好きな人にとっては、地上波のスポーツニュースにおける野球の扱いは満足できるものではなくなっている。試合のハイライトが1試合1分に満たないことがほとんどですからね。まして、巨人人気一辺倒の時代から、12球団にファンが散らばりつつある。あえて、地上波の夜のスポーツニュースにチャンネルを合わせるという習慣がなくなっているのでしょう。このままでは、地上波の野球ハイライトの存在価値がどんどん薄れて行く。
ただ、地上波の野球ハイライトが数字取れないからといって、すべての野球関連番組がそうかと言えば、そんなこともありません」
その言葉を裏付けるような数字があるという。
「プロ野球開幕直後、3月30日に『情熱大陸』(TBS系)で、巨人の内海哲也がクローズアップされました。視聴率は5.6%。翌週は安藤忠雄で3.4%、翌々週はプロ棋士チーム(将棋電王戦)で2.9%。3~4月で見れば、3月2日のクリス・ハートの5.8%に次ぐ数字を残しています。
『情熱大陸』のように1人を特集する番組は、誰が数字を取れるか取れないかが、分かりやすく出る。“巨人の内海”は、少なくとも取れないコンテンツではなかった。野球ファンのなかには『深く掘り下げるものは見たいけど、1分にも満たない薄いハイライトにはチャンネルを合わせる価値がない』と考えている人も多いのではないでしょうか。
だからといって、地上波のスポーツニュースの時間は限られている。そのなかで、中途半端に長めに時間を取るのは逆効果になりかねない。地上波のプロ野球ハイライト、野球関連ニュースは、岐路を迎えています」(同前)
現代は、薄い情報よりも、濃い情報が求められる時代。すると、コアなファンはよりコアな方向に向かい、ライトな層がいなくなる。プロ野球ハイライトの短縮は、一見さんのファンが減り、皆で巨人の話題を共有する時代ではなくなった象徴的な出来事かもしれない。