テレビリモコンが普及して以降、テレビ番組の作り方が変わっている。手導式と違い、手元ですぐにチャンネルを変えられるため、ザッピング(頻繁にチャンネルを切り換える行為)が増え、番組内容も瞬間瞬間の面白さにこだわるようになった。だが、視聴者は本当にザッピングばかりしているのだろうか。テレビ局関係者はこう話す。
「民放であれば、どの番組も瞬間視聴率をとても気にします。会議では、必ず『毎分表』が配られて、『ここで落ちた』『ここで上がった』と分析しますからね。でも、正直気にし過ぎかなと思います。なぜなら、視聴率の良い番組の後に放送される番組は、基本的に前の番組の流れを受け継ぐ。視聴率2ケタ番組の後は、数時間2ケタ番組が続く傾向にあります。
たとえば、日本テレビの日曜日は17時30分に始まる『笑点』から23時終了の『有吉反省会』まで視聴率2ケタの番組が続く。TBSの金曜日も、19時の『爆報!THEフライデー』から22時終了の『中居正広の金曜日のスマたちへ』まで2ケタ。今期は、22時からのドラマ枠『アリスの棘』も2桁で、その影響で23時からのトーク番組『A-Studio』も2ケタに乗るようになっています。以前は1ケタばかりでしたから、明らかに前枠の視聴率の流れを汲んでいます。フジテレビの木曜も、19時の『VS嵐』から23時終了のドラマ『続・最後から二番目の恋』まで2ケタを継続していますね。
この傾向は“人はテレビをつけたら、そんなにチャンネルを変えない”という証明になっているのではないでしょうか。業界が気にするほど、世間はそこまでザッピングをしていないはずです」
ザッピングを意識するあまりに、瞬間的な刺激ばかりを求め、ストーリー性に欠ける番組が出来上がってしまう。すると、それ自体が視聴者のザッピングを促進する。今のテレビ業界は、完全な悪循環に陥っているという。
「ドラマでさえも、“数分に1回、過激なシーンを入れろ”という指令があると聞きます。でも、ドラマを見る人は、基本的にザッピング目的で見ようとはしないはず。1時間を通して面白ければ、次回も見る。1つのストーリーを楽しみにテレビをつけている。昨年、『半沢直樹』(TBS系)が高視聴率だったのも、一貫したストーリーの面白さがあったからでしょう。
にもかかわらず、制作サイドは求められていない瞬間芸ばかりにこだわっていた。そのため、最近のドラマ離れが加速したのではないでしょうか。今はあまり聞きませんが、スポーツ中継のなかでも、“他局がCMに入ったから、盛り上げて!”とアナウンサーに無駄に大声を張り上げさせるディレクターがいました。普通の場面なのに、ですよ。ずっと見ている視聴者は疑問に感じますよね。テレビ業界全体として、ザッピングを気にしすぎる傾向は、辞めたほうが良いと思います」(同前)