ファッションプロデューサーの植松晃士さんが、おばさまたちが美しく生きるためのアドバイスをしてくれます。今回は髪形のお話。
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私の趣味は観劇ですが舞台に向かって座っていると、嫌でも前に座ったかたの御髪が目に入ります。歌舞伎やバレエ、宝塚などの客席は、それはおしゃれをしていらっしゃるかたばかりなのだけれど、意外と「髪の健康」はおろそか。
もちろん、それなりのケアはなさっているはずですが、年齢とともに髪も衰えます。質感や毛量も変わるし、艶や潤いも失われます。つまり、お若いときと同じケアを続けていたらダメなんです。
ところで髪の衰えがダントツで目立つスタイルをご存じかしら。それは、ロングのストレート。お若いときなら、カチューシャやバレッタを使ったり、ハーフアップもお似合いだったかもしれません。
けど、お顔が寂しくなってくると老け感が強調されて、どことなく薄幸そうにすら見えてしまいます。
ほら、市松人形のあの髪形だって、子供のあどけないお顔だからかわいいのよ。あれで目尻にしわがあったりシミが目立ったら、かなり不気味。妖怪風味たっぷりです。
松田聖子さんがひっつめ髪で美しく見えるのは、完璧なスキンケアとメイクがあってこそ。彼女のお肌は、まさに陶器肌のお手本。その聖子さんですら、毛先は巻いてふわっとさせています。
何気なく椅子に座った拍子に、「よいしょ」と呟いたら、それはヘアスタイル・チェンジの合図。
少なくとも、分け目やつむじの辺りが「自分でも」気になり出したら、ロングヘアとさよならする時です。自分が気づくということは、周囲は少なく見積もっても3年前には気づいていたと思いますよ。
石田ゆり子さん、賀来千香子さん、黒木瞳さん、南果歩さん、黒田知永子さんなどなど、素敵な大人の女性はみんなショートヘアでしょ。
素敵なお手本がたくさんあるというのに、どうして皆さん、ロングにこだわるのか。私にはわかりません。
※女性セブン2014年5月8・15日号