「元気でイキイキと暮らす高齢者は、脳が萎縮せずに頭蓋骨内いっぱいに詰まっています」と語るのは、脳のMRI画像診断の第一人者である加藤俊徳医師。これまでに1万人以上のMRI画像分析を行なってきた加藤氏によれば、長寿の秘訣は、脳に常に刺激を与えて鍛えてきたおかげで、思考がパターン化されていないことだという。次に紹介するのは、加藤氏がすすめる60歳からでも脳を鍛えられる生活習慣だ。
【飲み屋を開拓する】
家と会社の往復で、いつも同じ風景を見て同じ人とばかり会話をしていると、脳は省エネ化を図りパターン化しやすくなってしまう。
「駅からの歩くルートを変えてみたり、飲み屋を開拓したりすることで、行動学習を司る小脳を刺激できます。仕事で立ち寄った見知らぬ街の探検なども効果があります」(加藤氏・以下同)
【日記を書く】
明日はこうしてみようと思いつつ、つい忘れてしまうことはよくある。それを防ぐためには日記が有効だ。
「毎日どれだけ同じ行動パターンなのか確認できるし、変化を加えることへの意識が高まります。翌日の予定を組んでみるのもいい」
【計画を立てて時間を意識】
定年によって自由な時間が増えたからといって、時間を気にせず気ままに日常を過ごしてはいけない。
「スケジュールを立て、その通りに行動しようとすれば、頭の中では行動だけでなく時間も意識しているので、記憶を司る海馬を強くすることにつながります」
【自分を褒める】
ストレスが溜まると脳の活動は鈍くなり、気分も落ち込んでしまう。
「どうせ俺はダメだと自己否定せずに、落ち込んだ時こそよく頑張ったと褒めてあげる。精神的に本来の自分に戻して、脳を鍛えるモードにすることが大切です」
【家事を手伝う】
2013年9月の厚労省発表によれば100歳以上の高齢者のうち女性は87.5%。
「この数字は単に性差による寿命だけではなく、女性の生活習慣が少なからず影響していると私は考えています。炊事や掃除などで手先や体を動かし、1円でも安く買おうと努力することで脳に刺激を与えましょう」
面倒とは思わずに妻の手伝いを買って出れば、夫の評価も上がって一石二鳥?
【利き手でない手を使う】
普段の動作を利き手と逆の手を使ってやってみるのもパターン化解消には効果的だ。
「不自由を感じることで脳の酸素消費量が増え、脳が活性化しますし、前頭葉が刺激されます」
【菜園で四季の野菜を作る】
自分の力では太刀打ちできない自然にはパターン化が通用しない。
「第一次産業に従事していた人は圧倒的に長生きです。収穫量を増やすためには、その日の天候によって作物への水や光の量、温度などを工夫する必要があるので、思考を司る超前頭前野を鍛えることができます」
※週刊ポスト2014年5月9・16日号