夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回は寄せられたのは、ご主人(42歳)が損保会社勤務の奥様(41歳)。ご主人には「博識偽装」の疑いが……。
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結婚前、デートすると夫は「ピアノの詩人と呼ばれた作曲家のショパンは……」とか、「フランスの画家ユトリロには、『白の時代』といわれる時期があり……」とか、いろんな芸術家の話をしてくれました。芸術に疎い私は「すごいなぁ」と尊敬していたんです。ただ、私が「ピカソってどんな人?」と聞くと「今はユトリロの話をしてるんだ」と質問に答えないので、何かおかしいなと思ってました。
結婚してわかったのは、そういう知識は事前に調べてあったということです。そして、不意の質問に返ってくるのはいい加減な答え。特に息子が中学生になってからはバレバレで、私が夫に「『平家物語』の冒頭の『祇園精舎』ってどこ?」と聞くと、「祇園といえば京都だろ?」。
やりとりを聞いてた息子が「違うよ。インドだよ!」。夫はというと、「ハハハ、ジョークだよ」と誤魔化し、翌日どうやら調べたらしく「中インド舎衛城の南にあった僧坊で……」。もう遅いっちゅうの!
その息子から「パパ、犯人のことをどうして『ホシ』っていうの?」と聞かれた夫。
「ホシ? そんなの簡単。空の星はいつ出る?」
「夜」
「そうだよ。犯罪は星の出ている夜に多いからホシだ」
「雨の日もあるけどな……」
納得してない表情の息子を残し、夫はパソコンのある自分の部屋へ。そして戻ってくると、「今のはジョーク。正解は犯人だと『目星』を付けるから『ホシ』だ」。私も目星を付けたわよ。アナタのその知識は全部、にわかパソコン調べだって。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号