1996年9月にスタートし、今年3月、17年半の放送に終止符を打った『はなまるマーケット』(TBS系)。
番組開始前に募集があったリポーターの役を務める“はなまるアナ”の応募条件は「アナウンサー経験者・35才まで・女性は既婚者」と異例のものだった。それまでのリポーターは「女性は25才まで・独身」が多かったからだ。それなら私が、と応募した1人が、フリーアナウンサーの庄司麻由里さん(52才)だ。
番組の司会は岡江久美子(57才)、薬丸裕英(48才)。
「岡江さんに司会を依頼して“娘のお弁当作りがあるので、朝の番組はお受けできません”と断られたプロデューサーは、岡江さんしかいないと心に決めたそうです。毎日お弁当を作る苦労を知っているかたにお願いしたいと。薬丸さんは実は洗剤に詳しく、お掃除好きという家庭的な面があったのが理由のひとつだったと聞きました」(庄司さん、以下「」内同)
庄司さん初登場は番組開始2日目、「ママチャリ」の特集企画だった。
「その時間帯は、殺人だ不倫だと報じるのが当たり前でしたから、“ママチャリに30分なんてのんきな番組だなぁ”と思ったんですけどね…」
そんな『はなまる』に17年半も出演し続けた。これは岡江・薬丸以外では唯一の存在だ。
「今は無事、定年まで勤め上げたような気持ちです」
庄司さんが『はなまる』で初めて依頼されたテーマ「ママチャリ」だが、一筋縄にはいかなかった。
「生活情報番組は当時で10年のキャリアがあり、慣れているつもりでした。まず紹介したのは海外の自動車メーカーが作る自転車。お値段は約20万円。その金額を明かした途端、薬丸さんから“なんでそんなに高いの? デザイン代? 特別な金属を使っているの? ブランドだから?”と矢継ぎ早に質問されたんです。私としては“この自転車、格好いいですよね”“そうですね”という予定調和で進むものと思っていたので、驚いてしまって」
次に電動アシスト自転車を説明しようとしたら、今度は岡江が「それ、電池が切れたらペダルが重くなって使いにくくなるのよね。私いらないかな~」と発言。
「もう本当に驚いて頭の中はパニックですよ。これまで“リポーターの話は否定しない、打ち合わせにない質問はしない”が暗黙のルールだったので。正直、おふたりに対してなんて変わった司会者なんだろうと思いました(笑い)」
ところがスタッフルームに戻ると電話が鳴りやまない。
「薬丸さん、私もそんなに高い理由が知りたかった!」
「岡江さん、私の電動アシスト自転車への不満をよくぞ言ってくれた!」
ふたりの正直なリアクションへの視聴者からの絶賛の嵐だった。
「それを見てプロデューサーはにんまりしました。“うちの番組はこれでいい、これでいく”と。岡江さんも薬丸さんも原則、打ち合わせはせずに、番組でそのとき思った感想や質問をリポーターに投げかける。そして、はなまるアナは、ふたりからのどんな変化球も打ち返せと言われたんです」
この日から、庄司さんの闘いが始まった。
「どんな球が飛んでくるかわからないので、放送前日はまるで受験勉強。徹夜明けで生放送に挑んだこともたびたびでした。例えば、テーマが鰯(いわし)なら、生態から漁獲量までとことん調べ上げました」
また、構成の順番を変えるのもアリという異例のお達しもあった。
「情報番組はその時のテーマに沿って、VTR→A解説→VTR→B解説→VTR→C解説というように前もって組み立てられているのに、A解説の最中でも、岡江さんや薬丸さんからはBやCに対する質問がポンと入ってくる。普通、“それは後ほど説明します”で済ませていましたが、はなまるでは“それが視聴者が知りたいタイミングだ”という理由から、“後ほどは禁句”ということになりました」
※女性セブン2014年5月22日号