夫を失う悲しみは、どんな妻にもひとしく深い。たとえそれが、31才という親子ほど年の離れた夫婦で、結婚生活がわずか7年だったとしても。今年2月に亡くなった元TBSアナウンサー・山本文郎さん(享年79)の妻・由美子さんにとって、その7年は、25年、26年にも値する時間だったという。それほどにかけがえのない濃密な夫婦の時間を、遺された妻が手記の中であらためて振り返った。
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『芸能界最高齢での年の差婚』といわれてから約七年。皆様からすれば、短い結婚生活だと思われてしまうかもしれませんが、結婚生活を振り返れば、密度の濃い日々でした。三百六十五日、二十四時間態勢で仕事も私生活も全てを共に歩んでまいりました。まさに一心同体で、主人が今何を考えているかまでわかりました。
一般的な夫婦生活で例えると、朝、働き盛りの夫を送り出し、子育てをする妻。お互い自分の役割を懸命に生きる時期、睡眠時間を入れても一緒にいられるのは一日せいぜい数時間だと思います。それを考えれば、私たちは二十五、六年分の時間を共に生きたと自負しております。
結婚を決めた時、普通の結婚生活よりも短いであろうことをどこかで覚悟していたはずなのに、いつの間にか永遠に一緒だと思い込んでいました。当初は、様々なご意見に悩む時期もありました。しかし主人は「十人いたら三人が“いいね!”って言ってくれればそれでいいじゃないか! 視聴率で言ったら三十%だぞ! そんな数字今時なかなか取れないから」と笑顔でした。それ以来気にならなくなりました。
さすが、成功も失敗も数多く経験してきた者の言葉はいつも私の心に響き、この安心感こそが年の差婚の魅力でした。結婚後は、今までなくなっていた『家族の為に働く』という気力が湧いたようで、「お前たちの為に頑張って働くぞ!」といつも口にしてくれました。人は、『誰かの為に』と思うと頑張れるものなのですね。
※女性セブン2014年5月22日号