厚生労働省が発表した特別養護老人ホームの待機状況の調査結果によると、特養に入所の申し込みをして待機中の高齢者は「52万4000人」に上るという。入所の順番は申し込み順だけでなく要介護度や緊急性が加味される。
めでたく入所できたとして、それに安住して何もせずにいると、いつのまにか損をすることになる。特養に入って長い人だと15年ぐらい介護を受け続けることになるが、それほど長期になると、ちょっとした料金の差が積もり積もって大きな額となる。
特養は国の基準などで料金が定められているが、実は工夫次第でさらに料金を下げることができるのだ。
第一の裏技は「要介護度を下げる」。
自分の予算内で自由に介護サービスが選べる在宅介護と違い、特養の利用料金は要介護度に応じて包括請求される。だから、まず自己負担額を安くするには、要介護度を下げればいい。
「特養は、入居者の心身の状態が重くなったら要介護度を上げるため区分変更申請をしますが、軽くなっても申請はしません。要介護度が下がると収入が減るからです。ですから、家族が見て、本人の心身機能が改善し要介護度が軽くなったと思ったら、生活相談員にいって認定調査をしてもらえばいいのです」(ケアタウン総合研究所代表・高室成幸氏)
要介護度が下がったら、特養を追い出されるのではないかと不安になるが、その心配はいらないという。
第二に挙げられるのは、「住民票を特養に移す」。
実は、これまで家族と一緒に生活しており、住民票を移さずにいた入居者の場合、特養に住民票を移すだけで、単独高齢世帯として公的支援を受けられる可能性があるのだ。
仮に65歳以上で年間の年金額が148万円以下であれば、その世帯は住民税非課税世帯になるので、介護保険の自己負担(1割)で『高額介護サービス費の所得別上限額(月額)』が適用され、上限は月2万4600円になる。非課税世帯+所得・年金の合計額が80万円以下であれば、上限は月1万5000円となる。
たとえば要介護4の人の場合、自己負担額は月約2万6000円なので、非課税世帯なら月約1400円、非課税+所得・年金額が80万円以下なら月約1万1000円安くなる。
また、介護保険給付の対象外である部屋代や食費でも、非課税世帯なら『介護保険負担限度額認定の自己負担限度額(日額)』が適用される。非課税世帯、あるいは非課税世帯+所得・年金額が80万円以下なら、ユニット型個室の場合、1日約700~約1200円安くなる。また、食費の国の基準は1日1380円で、どの施設もそれに準じているが、非課税世帯+所得・年金額が80万円以下の場合は、1日990円安くなることになる。
これらは自分から自治体に申請をしなければ使えないので注意が必要である。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号