「はい、髪切りました。うちの近所の床屋さんです」と言う俳優・六角精児(51才)。
人気のテレビドラマ『相棒』シリーズの鑑識・米沢守役でおなじみだが、このほど著書『少し金を貸してくれないか』(講談社)を上梓した。取材当日は、印象的な髪形の、えりあし部分がちょっと変化していた。
「8月から2月まではドラマで、切れないんです。床屋へは行くんですけど、“1cm切って”“了解、1cm!”と、この繰り返しです」(六角・以下「」内同)
連続ドラマの中で突然、髪形を変えるわけにはいかないから、撮影が続く限りは、微調整ですませるしかない。
「昨日までは舞台をやっていたんですが、自分にこういう時が来るとは思わなかったですね。1日に2つも3つもかけもちで仕事をするなんて」
その舞台への出演依頼も、おかっぱ頭がきっかけだった(もちろん演技力と音楽の実力が大きいはずだが)と前置きをして、
「自分ではおかっぱだなんて意識したことないんです。ぼく、子供の頃からずっとこんな感じで変わってない。ただ、女性にふられてやけくそで坊主頭にしたことはあります」
30代だったか40代だったか、としばし考え、
「ああ、今結婚しているヨメさんに、離婚されたときですね。一度離婚されたんですよ」
現在の妻とは2度結婚している。著者の経歴には、結婚は複数回とある。
「経済力ないのに酒は飲むし、遊んでいる、別れた原因は自分でよくわかっています」
自らの性格を、「破滅型のダメ人間、自堕落で歯止めがきかない、意志が弱い、誘惑に弱い、快楽に勝てない」と生真面目に、申し訳なさそうに並べていく。
「酒とギャンブルが普通じゃなかったんです。でも、それが俳優だからと、どこか許されてきたところがあるんですね。お芝居をしていて最終的に見えてくるのは本人なので、演技派でもないぼくとしては酒やギャンブルの経験も芸の肥やしとなっているのかな、とは思いますけど…」
ギャンブルといっても主にパチンコだが、今は仕事に追われてお酒ともども休止中。
「ここ1、2か月はあの自堕落な生活が、懐かしいですね。借金まみれだったあの大変さすらどうにも懐かしい。でも、繰り返すのは嫌です、あの頃に戻りたいわけじゃないんです」
心細げに話すが、生まれついてのぐうたらではない。子供時代、マラソンのように持久力を試される運動では相当頑張った。テストで80点以下を取ることを母親が許さなかったのでよく勉強もした。
高校は神奈川県立の進学校へ。ただし、その高校時代から少しずつ道を逸れていく。
「部活には必ず入らなければならなかったので、いちばん楽そうな部活、演劇部に入ったんです。キャスティングされなければ、すぐ家に帰って好きな音楽が聴けると思って。ところが、さにあらず。うちの学校、ぼくが出演していたお芝居で全国高等学校演劇大会に出場することになったんです」
このとき部を率いていたのがひとつ上の先輩で、現在は劇団扉座の主宰者で演出家・劇作家として活躍中の横内謙介だった。上演した作品が彼の処女作『山椒魚だぞ!』で、彼は優秀賞と創作脚本賞を受賞する。というわけで、横内の指導の下、著者は必然的に演劇部で過ごす時間が増えていった。
「うちの親は非常に堅実で、子供になぜか中級公務員になれ、って言ったんですよ」
その言いつけに反抗しつつも、そういうものかと思い、一浪して大学へ。浪人中に横内に誘われて劇団の旗揚げに参加する。大学へは毎朝向かうものの、途中でパチンコ屋を見るとどうしても入らずにはいられない彼は、大学にはほとんど行かなくなった。
「何回か舞台をやって学生時代の思い出になれば、というだけで、長く続けるつもりはまったくなかった。役者でめしが食えるとは、さらさら思いませんでしたから」
※女性セブン2014年5月22日号