しかし、翌年に私がまた訪問すると、彼らは環境に慣れてきたせいか、自分たちのコミュニティ作りのために生き生きと汗を流していました。私は「去年来たときは、『もう死にそうだ。他の場所に移してもらいたい』と言っていたじゃないか」とジョークを言いましたが、彼らもまた笑っていました。彼らは笑顔が出るほど余裕ができて、楽観的になって、困難を乗り越えることができたのです。いま、彼らは幸せな人生を送っています。
私は世界中を回っていますが、世界の人々に必ずお話しすることがあります。それは日本とドイツのことです。日本とドイツは戦争で大きな苦しみを受け、大きな困難に直面した。
すべてが灰燼に帰した廃墟のなかから素晴らしい近代国家を再生させ、見事に復興を成し遂げました。そして立派な民主主義国家となり、経済ばかりでなく、政治的にも安定した社会を建設するなど素晴らしい業績を残したのです。日本人は自信を持って、強い決意を抱いて、どのような困難をも乗り越えて成功に導いたのです。
これはすでに日本が経験したことです。ですから、みなさんも困難に打ちのめされても絶対に諦めないという心が大切です。自分のやりたいことに正直になり、目標を持ち、心に余裕を持って、具体的にどのようにすれば目標が実現するのかを考え、現実的に対処することが必要でしょう。日本は伝統的に精神が強く、そして勤勉です。そうした精神世界と物質的な豊かさが融合して、今回の地震からの復興も必ず成功すると私は信じて疑いません。
■取材・構成 相馬勝(ジャーナリスト)
※SAPIO2014年6月号