韓国内で3月から4月にかけて計3機の墜落無人機が発見された。韓国の危機管理について、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が指摘する。
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軍事専門家によると、今回発見された北朝鮮の無人機はその大きさや性能から「模型飛行機に毛が生えたようなもの」だという。確かに、偵察写真撮影のため搭載されていたカメラはキヤノンやニコンの市販品だったし、映像を北に送信する装置もなかった。
韓国国防省は「将来、攻撃用に使われたとしても搭載できる爆弾は2~3kg程度でたいしたものではない」と平静を装っていたが、この程度の技術レベルでも、毒ガスや細菌など化学・生物兵器を積んで飛来することは可能だろう。
重要なのは、韓国が一見、素朴で古臭く時代遅れに見える北朝鮮の武器や戦術に揺さぶられているということだ。4年前のペンニョン島沖での哨戒艦撃沈事件もそうだ。平時で無警戒だった1000t級の大型哨戒艦が、北朝鮮の小型潜水艦による魚雷攻撃で一瞬のうちに沈められている。
こうした戦術を「非対称型戦術」という。韓国軍はイージス艦や弾道ミサイル、F35ステルス戦闘機など見栄えのいい先端兵器の開発・保有に熱心だが、北朝鮮は実情に合った実効性のある素朴な兵器・戦術で韓国に着実に打撃を与えることを狙っている。
たとえば北朝鮮軍の対南有事作戦には、半世紀以上前に開発された旧ソ連製の木造プロペラ輸送機「アントノフ2」による超低空からの特殊部隊の後方侵入がある。北朝鮮は核兵器や長距離ミサイルだけではなく、素朴な魚雷、プロペラ機という「非対称型」の軍事力で韓国を押しに押しているのだ。
こうした「北の脅威」に対し韓国は「対称的」に対応せず、とんでもない方向を向いて「日本の(右傾化の)脅威」ばかり叫んでいる。
その象徴がしばしば繰り返される「独島守護作戦」と称する反日軍事演習だ。最近は「日本が集団的自衛権を行使し、独島を再び軍事的に奪いにくる」といわんばかりに、世論の目を北ではなくしきりに日本に向けさせている。今回の無人機事件はそのツケだ。
米国は、日本と軍事情報保護協定さえ結ぼうとしない韓国にイラ立っている。マスコミの扇動に乗って「日本の脅威」という虚構にこだわる韓国の安保体制は隙だらけだ。
※SAPIO2014年6月号