プロ野球の歴史の中で外国人選手の存在は見逃せない。しかしその獲得はギャンブル要素が強く、ブーマーやラミレスのように活躍してファンにも親しまれた選手がいる半面、トマソンやグリーンウェル、ペニーなど「がっかり外国人」と言われる選手も存在した。選手個人の差だけでなく、球団によって、外国人獲得の巧拙もある。12球団が過去に獲得した外国人の成績を調査すると、目立つのはヤクルトの巧さである。
打撃面では文句なしで断トツ。投手面では巨人に分があるように見えるが、実はその投手も「元はヤクルトが招聘した投手を巨人が強奪した」ケースが多い。
「実は巨人は外国人選手そのものだけでなく、スカウトまでヤクルトから獲得しているんです。2005年、巨人はヤクルトで約30年間にわたって通訳や渉外担当をしてきたN氏をフロント入りさせた。N氏はヤクルト時代にホーナー、ハウエル、ペタジーニ、ラミレス、ブロスといったタイトルホルダーを獲得してきたスゴ腕です」(スポーツ紙デスク)
目下3年連続でセ・リーグ本塁打王に居座り続けているバレンティンもヤクルト。セの過去30年の本塁打王33人(1984、2003、2004年は同数で2人)のうち、ヤクルトの外国人スラッガーが9人もいる。
なぜ、ヤクルトの外国人はこうも活躍できるのか。
「優秀な選手を探し出すスカウト能力が優れているのはもちろんですが、ヤクルトは伝統的に、外国人選手に対して親身になって接することで有名なんです。日本人がベンチで積極的に話しかけて、選手同士の会話が多い。そしてラミレスのように、12球団の外国人選手を束ねるリーダー的存在も生まれてきている。今では日本に来た外国人選手は、ラミレスの店で情報交換するというのが“お約束”になっています」(同前)
クリーブランドやピッツバーグのマイナーでくすぶっていたベネズエラ出身のラミレスに目をつけ、日本での新境地を提供したヤクルトの慧眼は、称賛に値しよう。横浜を退団したラミレスが今なお、BCリーグの群馬に所属し、コーチ兼任でプレーしていることを考えると、プレーヤーとして生きる場所に巡り合うことの運、不運ということを考えさせられてしまう。
「それに打者の活躍が多いのは、メジャーでは開花できなかったバッターが、狭い神宮で自信をつけることや、巨人や阪神と違ってバッシングも少なく、のびのびプレーできるのも理由だといわれています」(同前)
※週刊ポスト2014年5月23日号