「あっ!」――手に持っていた紙くずをゴミ箱めがけて投げたものの、まさかのコントロールミス。目を見開き、口はあんぐりと開いたまま固まるニノ。床に落ちたゴミを拾うスタッフに、「すみません! ありがとうございます」と頭を2度下げた。『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』(日本テレビ系、毎週土曜21時~)に新人教師役で赴任し、弱小野球部監督に就任する田茂青志役を演じている嵐の二宮和也(30才)。
「野球は経験者ですよ、はい」と、笑いをこらえる記者に頬を赤らめながら言い訳する姿がまた素直でかわいい。
ニノの連続ドラマ出演は2010年『フリーター、家を買う。』以来、実に3年半ぶりとなる。
「待ってました! ってたくさんのかたから言っていただいて、本当に待っていただいていたんだな…ってしみじみ思いましたね。仕事はしているはずなのに“仕事しなさい!”って言われ続けていましたから(笑い)」(二宮・以下「」内同)
ドラマ『弱くても勝てます』では、初の教師役、初の野球部監督役に挑戦しているが、事前に役作りはしていなかったという。
「先生だからとか、監督だから、っていう役柄については考えてないんです。見てくれるかたが決めてくれればいいんですよ。見てくださるかたすべてからいい! って思ってもらえなくてもいい。人はそれぞれだから。だけど、見てくださるかたの気持ちが少しでも動かせたらなって。明日一日頑張れそう! って思ってもらえたら本望ですね」
ドラマの優劣より、どれだけの人の心を動かせるのかということに、役者としてのこだわりを見せる。本作はへっぽこ高校球児が甲子園を目指す物語。ニノの高校生の頃の夢は何だったのだろう?
「ぼくは高校1年生の秋(1999年)に嵐のメンバーになったんですけど、嵐になる前からジャニーズを辞めるってジャニーさんに宣言していたんですよ。嵐も期間限定のグループだと思ってたから、9月に結成してもワールドカップバレーボールが終わる頃には辞めようと思ってたの。
辞めて舞台の演出をやりたいって真剣に思っていたから、それなりに準備もしてたんですよね。まだ若い22~23才までの早熟で多感な時期に作品を一つ残しておきたかったんです。趣味嗜好だけで突っ走れるときにね」
デビューに戸惑いがあったという話は周知の事実だが、まさか嵐を期間限定のグループだと思っていたなんて…。
「もう演出家になろうとは思ってないですよ。30才で作品を作るって普通のことなんですよ。今は失うものが多すぎるよね、作品の良し悪しでしか判断されなくなっちゃうから。だから今はいただいたものをどうしたら楽しめるのか、楽しんでいただけるのかを考えてる。
それはさ、嵐の活動も一緒だよね。自分がどう映るかとかどう見せるかじゃなくて、見てくださる人たちの気持ちをどう動かせるかなんだよね」
3か月で辞めるつもりだった少年が、国民的アイドルグループの一員にまで成長し、その人気に奢ることなく冷静に物事を判断しながら走り続けている。そのひたむきな姿に、誰もが温かい声援を送るのだろう。
「応援してくださるかたがいるってありがたいことですよ。CDやDVDを出せば見たり聴いたりしてくださるかたがいて、ドラマに出るってなったらこうやって取材していただいて。幸せなことだと思います。昔のアイドルって、大変だったんじゃないでしょうか。型にはめられていた部分もあったように思うんです。でも今は、ぼくらから何かを発信することができる。ぼくらは恵まれてるなって、つくづく思います。幸せなことですよね」
どんなときも感謝の気持ちを忘れないのも、ニノの魅力だ。
「せっかくドラマに出させてもらえたんだから、見てよかった! って言ってもらえるように頑張りますよ」
少し猫背の、不安と自信がないまぜになった表情で、自分に言い聞かせるようにそうつぶやいたかと思うと、最後にキラリと光るとびきりの笑顔でこちらを振り返る。見る者すべてを虜にするニノの役者魂は、決して消えることはない。
※女性セブン2014年5月22日号