日本のプロ野球にとって外国人選手の獲得はギャンブル要素が強く、王貞治引退後の巨人主砲を期待されていたトマソン、「神のお告げ」で引退を決断したグリーンウェルなど期待外れも少なくない。その一方でポンセ、ブーマー、ラミレス、バレンティンら活躍した選手もいる。両者を見比べると、興味深い傾向に気が付く。野球関係の著書が多いライター・広尾晃氏の話。
「日本で結果を残した選手は、メジャーでの実績が少ない。反対にメジャーで名を残した選手ほど、日本では活躍できていない。いかに“メジャー○○本塁打の怪物”などといった触れ込みが当てにならないかがわかります」
なぜ無名選手のほうが実績を残せるのか。メジャーでのコーチ経験のある高橋直樹氏が語る。
「メジャーでは基本的に速い球を打てる打者が良しとされます。なぜならメジャーの投手が投げてくるのは、平均150キロの速球に、変化球もスプリット系の速いものが多い。そのため、練習でも投手に近づいてのフリー打撃などが盛んに行なわれるのです。
そのため振りが大きくて、速球に対応できない選手はすぐに3Aに落とされる。しかしこうした打者は、日本の多くの投手が投げる135キロ前後のストレートには対応しやすい。変化の大きな日本の変化球を打つのが上手いケースも多い。そのため3Aでくすぶっているような選手が、日本では大成功しやすいといえます」
確かに今年、楽天が獲得したメジャーの有望新戦力ユーキリスは、4月末の段階ですでに登録を抹消。昨年、優勝の立役者と謳われたジョーンズも、打率は2割4分台に低迷していたうえ、実はリーグ最多三振を喫しており、今年も打率2割前半に沈んでいる。これも「メジャーで実績のある選手は日本で活躍できない」という法則通りだ。
※週刊ポスト2014年5月23日号