ライフ

糖尿病患者の血糖値を下げすぎると死亡率増加するとの米研究

 欧米では高血圧治療薬で血圧を無理に下げすぎると、心身へのダメージが大きく死亡率が高まるとの研究結果も存在しているが、薬で無理矢理に下げすぎると怖いのは、血圧だけではない。

 血糖値をむやみに下げることがいかに恐ろしいことかを世界中の医師に印象づけたのが、米国立衛生研究所(NIH)が中心となって行なった研究だ。

 心血管疾患リスクの高い糖尿病患者約1万人を対象に、厳しい血糖管理で血糖値を正常値に近づける集中治療の効果を調べるものだった。

 被験者は、血糖値の指標となるヘモグロビンA1cを7.5%まで下げる「標準治療グループ」と、6.4%まで下げる「強化治療グループ」に分類。

 当初、血糖値を大きく下げたほうが、死因の上位を占める心筋梗塞や脳卒中などの合併症が抑えられると見込まれていた。しかし、強化治療グループのほうが約22%も総死亡が増加するという想定外の結果が報告された。

 後の調査で、強化治療グループでは「重症低血糖」が頻繁に起こっていたことが判明。血糖値が下がりすぎてしまうことによって、皮肉にも心筋梗塞や脳卒中を誘発していた可能性が指摘されたのだ。

 高血圧や高脂血症、糖尿病などの予防治療を専門とする医学博士で新潟大学名誉教授の岡田正彦氏が解説する。

「血糖値というのは脳のエネルギー源ですから、低血糖症になると、脳の中枢神経の働きが低下し、意識消失や異常行動、昏睡状態に陥るケースがあります。

 血糖値の基準値は年齢に関係なく、100mg/dl未満。しかし最近のデータによれば高齢者であれば治療目標は160~180mg/dlとかなり高めに見積もられています。つまり、病気ではないのに血糖値を下げる薬を飲んでいる人が多い。

 高齢者が薬による急激な血糖値の低下で、立ちくらみや失神などを起こして生命にかかわる事態に至るケースが実際に頻発しています」

※週刊ポスト2014年5月23日号

関連キーワード

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン