国立社会保障・人口問題研究所の推計では、出生率が現状のままだと2012年に1億2752万人だった人口は2060年に約8700万人まで激減する。生産年齢人口(15歳~64歳)も同期間に約8000万人から約4400万人まで減少し、高齢化率は約4割に達する。それは何を意味するのか、法政大学准教授の小黒一正氏が解説する。
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社会保障の最大の問題は世代間格差だ。年月とともに現役世代の負担が増す。内閣府の資料から、生涯における医療・介護・年金などの社会保障や教育など公共サービスを通じて政府部門から受ける受益と、税金や社会保険料として支払う負担の差額である「世代会計」を試算した。
すると、60歳以上は4875万円の受益超過(黒字)。毎年1兆円ずつ膨張する社会保障関連費は若い世代を圧迫し、40代で172万円の支払い超過(赤字)。1984年以降に生まれた将来世代は4585万円の支払い超過となる。まさに「財政的幼児虐待」(ボストン大学・コトリコフ教授)なのだ。
国と地方の借金はGDPの2倍に達し、1000兆円を超す。人口減少でGDPが縮小すれば返済は大変困難になる。新規国債の発行ができなくなり、財政破綻もありうる。
国連の試算(2004年)によると、1950年に世界5位だった日本の人口は2000年に9位となった。それが2050年には15位までランクダウンする。その時点で上位を占めるのはインド、中国、パキスタン、インドネシアなど新興国で、トップ20に入る先進国はアメリカ(3位)と日本のみとなる。
日本の製造業の強みは、国内に巨大な市場があったからだ。国内市場で十分な利益を上げて商品開発できるため、独自の新商品を生み出し、それを海外に輸出できた。マーケットが縮小すれば、新商品の開発もおぼつかなくなる。人口小国の集まるヨーロッパがEU統合を果たした理由のひとつが人口問題だった。
※SAPIO2014年6月号